28※学んだ感情
「お前ら何をしてる。」
二人は声に反応し、振り返ると遠目に見えるのはローの姿。
下にジーンズだけ穿いて、上半身は裸。
「せ、船長!」ペンギンが慌てて抱き着かれているクーラの肩を持ち、離す。
「船長、これは不可抗力で」
「え、え?」
ローがただならぬ雰囲気を醸し出しながら近付いてくる。
月に照らされた刺青から妙な威圧感を感じるが、それが何故だかクーラには理解出来なかった。
「イヴ。戻るぞ。」
きょとん、という顔をしたクーラの手を掴むと、強引に引っ張って船の中へ入っていく。
「な、なに?ロー……?」
「黙ってろ。」
怒りの態度なのは分かるが、怒っている理由を思い付かないクーラは頭に疑問符を浮かばせながら手を引かれるがまま、部屋へ連れ戻された。
「こええよ、船長……。」そんなローを見て、ペンギンは暫くその場で固まっていた。
部屋に戻るとクーラはベッドへ押し倒され、ローが覆い被さった。
眉を寄せ、睨むように見る。
「おれには言えないことをアイツには言えるのか。」
「?どういうこと?」
クーラの頭の疑問符が増える。
「大方、見た夢の内容をペンギンに話して落ち着いたお前がありがとうとか言って抱き着いたってとこだろう。」
「あ……そうね。その通りよ。」
違うけれど、あながち間違ってない、とその推測を肯定する。
「気に食わねェ。」
ローは深いキスを何度もした。
その荒々しさに、恐怖感を覚える。
「んんっ!んっ……ふあっ、ふっ」
唇を離すと着ていたTシャツを捲り、下着を外し、胸を露わにした。
「こわい……ロー……。」
「うるせェ。」
夢で見た冷たい目のローと重なり、目に涙が溜まる。
「やめて……!こわい……。」
「……チッ。」
苦い顔をしたローはそれ以上クーラに手を出さず、隣にぼすっと横になり、クーラに背を向けた。
「…………もう他の男に抱き着いたりするな。」
「……それで、怒ってたの?」服を直しながら言う。
「悪ィか。」
「他の男の人と仲良くするのが気に入らないってこと?」
「悪ィか。」
クーラには経験のない感情だったが、もし、ローと他の女性が抱き合っていたり、キスしていたりしてたら、と想像してみると、なんだか心がちくちくとした。
これが嫉妬心と言うものなのかな、と漸く分かったクーラは、ローの新たな一面を知れたことに嬉しさを感じた。
「……ふふっ。」
「何笑ってる。襲うぞ。」
「ふふ、ごめんなさい。」
「この……、やっぱり襲う。」
ローがごろん、とクーラの方を向くと、クーラの手首を掴んだが、先程のような力も威圧感も全くなく、冗談であることはクーラにも分かった。
くすぐったくて、また笑ってしまう。
ローもつられてか、フッと笑ってゆっくりキスを落としまたクーラに背を向けた。
「おれは…………」
ぼそりと何かを言った気がしたが、クーラの耳には届かなかった。
「何か言った?」
「何も言ってねェよ。さっさと寝ろ。」
「……そう。」
(気のせいか。)
窓から入る夜の光で見える背中のジョリーロジャーに、「おやすみなさい。」と言うとクーラは目を閉じた。
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