2文字の言葉



『好き』

たった2文字なのに、どうしてこの言葉が言えないんだろう…。




一度告白をしようとしてから2ヶ月。俺は、相変わらず悠太に想いを告げることができずにいた。

メールや手紙なら伝えられるかもしれないと、悠太の寝ているうちに想いを綴ってはみたけれど、それも渡せぬままに終わった。

一番近いこの兄弟という関係を崩すのが怖い。口を利いてくれなくなったらどうしよう。気まずい雰囲気になったらどうしよう。
そういった考えが、告白するのを踏み止まらせていた。



「祐希、そろそろ行ってくるね」


いつものように思い悩んでいたとき、部屋を出ようとしている悠太から声が掛かった。
あぁ、そっか。今日は春の家に行くって言ってたっけ。


「じゃあ、いってきます」

「あ、悠太…!」


"行かないで"

そう続けようとして、慌てて言葉を切った。思わず伸ばしてしまった手は、悠太の服の裾をしっかりと掴んでいる。

あぁ、やってしまった…。

呼び止められた悠太は怪訝そうな表情をして、俯いてしまった俺の顔を覗き込む。


「祐希?どうしたの?」

「あ、えっと…」


咄嗟の行動だったために心の準備なんてできているはずもなく、答えに詰まる。

どうしよう、言ってしまおうか?でも、それでもし失敗したらどうなる?悠太の隣に居られなくなっちゃうの?逆にもし成功したら、ずっと一緒に居られるよね?

心の中であれこれ葛藤をするものの、答えなんて一向に出てこない。
…あーもう。こうなったら当たって砕けろだよね。フラれたらフラれたで諦めがつくんだからいいじゃん。よし…!


半ば自棄気味に決意を固めた俺は、顔を上げて真っ直ぐに悠太を見る。悠太は、相変わらず怪訝そうに俺を見ている。
ぶつかり合う視線に怯みそうになるけれど、もう引かない。俺は覚悟を決めたから。


「悠太、…好き、」


短く、簡潔な言葉だった。たった2文字だけど、俺にはこれが精一杯。この2文字に、俺の想いが全部詰まってる。この言い方じゃ、ちゃんとした意味で届いたのかが不安だけど…。

でも、そう思った次の瞬間には、ちゃんと伝わったんじゃないかなって思い直した。だって、悠太は驚いたように少し目を見開いた後、はにかみながら「俺も」って言ってくれたから。


頬を少し赤く染めて笑う悠太が愛しい。想いが通じたことが嬉しい。

思わず目が潤んでしまったのを悟られないように、俺はそっと悠太を抱きしめた。







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奏夜さまの3万打企画にリクさせていただきました!
祐悠で前回の言えない言葉の続き、ポルノのSheepという曲のラストのイメージで、ということで書いていただきました
ハッピーエンド万歳!双子可愛いなあぁ…
この曲は本当に祐悠のイメージぴったりなので(36でも可ですが)ぜひ皆様に聞いてみていただきたいです
奏夜さま、ありがとうございました!3万打おめでとうございます


2011.11.09


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