寒い冬の日に



すっかり日も暮れ、寒さがさらに増した部活からの帰り道。最近となっては、レギュラーメンバーで一緒に帰ることが日課のようになっていた。最初は俺だけ別なこともあったが、たまには一緒に帰るのも悪くないと思ってからは、こうしてちょいちょい一緒に帰っているのだ。
彼らの下校風景は、見ていて非常に面白い。たまにうるさ過ぎて煩わしいと感じることもあるが、大抵は飽きない面白さがあるのだ。

「青峰っち青峰っち青峰っちー!」
「んだよ、さっきからうっせーな」
「だから、寒いんだってば!青峰っちのマフラーちょーだいっ」
「んなことしたら、俺がさみぃだろうが!って、おい!ばかっ、取るな!!」

自分がマフラーを忘れたくせに、黄瀬は青峰のマフラーを取り上げていた。そして、マフラーを巻くなり、あったかいっスと顔を埋めている。そんな黄瀬に、返せと吠える青峰。まっく、いちゃつくなら他所でやってほしいものだ。
ため息をつきつつ、前を歩くもう一つのグループの方へと視線をやれば、ちょうど紫原が緑間へと覆い被さっているところだった。

「ミドちーん、お腹すいたー。おかしー」
「重い!そんなもの持っていないから、早く退くのだよ!」
「あ、じゃあマジバに寄りましょう。赤司くん、いいですか?」

それまでずっと事の行方を見守っていた黒子が、くるりとこちらを振り返る。そんな彼の提案に、俺はふっと口許を緩めつつ頷いた。




「俺は、テリヤキバーガーな」
「俺、チーズバーガーにするっス」
「僕は、バニラシェイクが飲みたいです」
「こんな寒いときにバニラシェイクなど、理解に苦しむのだよ」
「…お汁粉の方が理解に苦しみます」
「バカめ。俺のはあったか〜いなのだよ」
「そういう問題ではありません」
「こら、お前たち喧嘩をするな。紫原は何にするんだ?」
「んー、俺は赤ちんと同じのでいいやー」

各々メニューを決め、俺がまとめて注文をする。今日は比較的空いているようで、6人全員が同じテーブルに座ることができた。黄瀬、青峰、黒子と緑間、紫原、俺の3人に別れて、向かい合わせに座る。黒子は相変わらず少食で、バニラシェイクの他に、みんなで食べるように頼んだナゲット2つしか食べないつもりらしい。仕方なく、俺のを少し千切って分け与えるが、彼は夕飯が入らなくなるのでと受け取ろうとしない。しかし、部活で体力を消耗しているのだから、バーガーの3分の1くらい食べても夕食が入るくらいでなければ、身体がもたない。

「黒子、少しなら食べれるよね?」

笑顔を向け、もう一度千切った部分を差し出せば、黒子は少し間を置いて受け取ったのだった。隣に座る紫原は、見ているだけでこっちが満腹になりそうなほど食べている。ハンバーガーやナゲット、ポテトはもちろんだが、なによりお菓子だ。こういった店で物を持ち込んで食べるのは良くないと注意をすれば、渋々ながらお菓子の山を片付け始める。
緑間はその横で、テーピングが汚れないよう気を付けて、神経質に食事を進めていた。替えのテーピングがあるのだから、食事くらい普通にとれば良いものを…と思いつつも、それは口にしない。彼なりのこだわりであり、しかもそのこだわりはバスケに繋がるものなのだから、そのままにしておいても何ら問題はないのだ。問題があるとすれば、向かいの席に座る黄瀬と青峰か。最近付き合いだしたことは、もはやここにいるメンバー全員が知っている。認めてもいるし、応援もしている。しかし、そのせいで遠慮がなくなってきているように思うのは、気のせいだろうか。今も、青峰が黄瀬のチーズバーガーを一口くれと言い、黄瀬が恋仲の者がよくするように、あ〜んと言って食べさせていた。

「青峰っち、美味しいっスかー?」
「あぁ。でも、やっぱテリヤキだな」
「えー、そんなこと言うなら、もうあげないっスよ!」
「なんでそうなんだよ。べつに、不味いとは言ってねぇだろ?」

拗ねる黄瀬と、文句を言いながらもそれを宥める青峰。隣で黒子が迷惑そうに顔をしていることにも気付かず、二人は言い合いを続ける。最終的には、黄瀬が青峰に泣きつき、青峰はそんな黄瀬の頭を撫でてやるという、なんともカップルらしい光景を見せ付けられたのだった。

「…おい、お前たちはもう少し場を弁えるべきなのだよ」
「あ?」
「いちゃつくなら、他所でやれと言っているのだよ」
「んだよ、緑間羨ましいのか〜?」
「あー。緑間っち、まだそういう人がいないから…」
「違うのだよ!誰が羨ましいと思うものか!!」

一見常識人に見えて、厄介なのが緑間だ。完全に二人にからかわれ、ペースに乗せられてしまっている。俺の言いたかったことを代弁してくれたのはありがたいが、また問題が増えたようだ。しかも、そこに紫原や黒子まで参戦するのだから、俺は頭が痛くなってきた。

「でもさ〜、ミドちんの好きなタイプって年上でしょ〜?おねーさんって、こういうことしてくれんのかなー?」
「お姉さんだったら、緑間くんは頭を撫でられる側ですね」
「うっわ、なんだそれウケる!」
「泣きついて頭撫でられる緑間っちとか…っ」
「笑うな!いい加減にするのだよ!」

わーわーぎゃーぎゃー、ここが店内だということも忘れて、会話を進める緑間たち。青峰と黄瀬は腹を捩らせて笑い、紫原と黒子は自分は関係ないという顔をしつつも、絶妙なタイミングで緑間をからかう。そして、緑間はそんな彼らを怒鳴り付けていた。そろそろ止めなければ、店に迷惑がかかってしまう。中学生にもなって、こんなことで店員から注意を受けるなんてごめんだ。ため息を一つ吐き、注意をしようと口を開いたときだった。笑い声がうるさいと、青峰の脇腹に黒子が手刀を決め、その反動で青峰が飲んでいたコーラを盛大に溢したのだ。そして、その溢したコーラはというと、紫原と俺の方まで届き、制服を汚していた。一瞬にして空気が凍りつくのが分かる。
…さて、うるさい犬たちをどうやって躾してやろうか。

「あ、赤司!これは、テ、テツが手刀をだな…!」
「僕のせいにしないでください。青峰くんと黄瀬くんが騒いでいたのが悪いです」
「え!俺も!?も、元はと言えば、緑間っちが俺たちのことを羨ましがったり、年上趣味だったりするから!」
「お前たちが店内でいちゃついていたのが、そもそもの原因だろう!それに、年上が好きなことは関係ないのだよ!」
「ねー、赤ちん。俺、ブレザー洗ってくんね。赤ちんのも洗ってきてあげるから、貸してー」
「ああ、ありがとう紫原。……さて、他の奴らは至急外に出ようか?」

満面の笑みを浮かべ、そう指示をしてやれば、彼らは見たこともないような早さで立ち上がり、外へと向かった。店員の明るい、ありがとうございましたーという声を背中に受け、俺は彼らを店から少し離れたところに正座させる。
冬の寒空の下、彼らは俺の説教を受けながら、1時間ほど二重の意味で体を震わせていた。




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奏夜さんが10万打ということで、リクエストさせていただきました!
青黄中心にキセキがワイワイしているお話です
青黄かわいいなもう…!これだから青黄は…!
個人的に巻き添え食らった緑間くんとお説教赤司くんが好きです
赤司くんさすがすぎて何も言えない…
奏夜さん、10万打本当におめでとうございます!そして扱ってないのに青黄お願いしてしまってすみませんでしたm(_ _)m


2012.12.24


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