「・・・。」


もうどのくらい歩いたでしょう。先ほどから寸分も変わらない景色。どうやら道に迷ってしまったようです。


いい加減歩き疲れたヒロキは、ふと視界が開けたその先に小さな一軒の家を見つけました。


―おっと。第一森人発見か。


ヒロキはちょっと考えます。
このまま闇雲に歩いていても仕方ありません。
自分では認めたくないけれど、どうやら迷ってしまったようだから。
ここいらで一旦ここはどこなのか、せめてそれだけでも誰かに聞いておかねばなりません。


ヒロキはそろりとその家へ向かうと、小さなドアをノックしてみました。
しーんとした森の空気。物音一つすら中からの応答がありません。
もう一度ノックして声をかけると、いまにも壊れそうな古びた小さなドアノブに手をかけました。


―あ、開いてる。


するっと簡単に開くドアに誘われるようにするりと身を滑らすと、ヒロキはとりあえず小さくこんにちはと声を掛けてみました。
やっぱり返事はありません。


がらんとした部屋の中にはひとの気配がなく、代わりに小さな机がななつにベッドもななつ並んでいました。


この家はななにん住まいなのでしょうか。
それにしても留守中に家の鍵を開けっ放しにしておくとはなんて無用心な家なのでしょう。


とにかくひとに会えそうなことに安堵して、先ほどから疲れ果ててしまっていたことを思い出したヒロキは、少しの間だけ、とベッドの一つを拝借してそのまま眠ってしまいました。


ベッドは暖かなおひさまの匂いと少しだけしんとした森の冷たさが染み込んでいました。




-------< この国のノワキは、ややこしい/続く>
(10.11up)

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