おどけながらもどこか神妙なアキヒコの誘いにヒロキもまた神妙にこっくりと頷くと、二人はその大きな森の入り口までやって来ました。
鬱蒼とした森は昼間でも暗く、先が全く見えません。


「…クマでも出るんじゃねーの?」


ヒロキは別の意味で心配です。
ぽっかりと口を開いた森の入り口に思わず躊躇していると、アキヒコは先陣をきって勝手に奥へと進んでいきます。


「って、オイ待てよ!アキヒコ、どこ行くんだよ!」


地図もない場所。それぞれ離れ離れになって迷子になりかねません。


「二人で探すより手分けして探した方が早いだろ?」


アキヒコは全く臆する事なく言います。
そんなアキヒコに、ヒロキはなるべくアキヒコから離れないよう二手で探す振りをして、しばらく経ってからそっと手を繋いで二人で森を出て、なぁんだ一番大切なのはやっぱお前だったんだな、とそれぞれ気づいてくれればいいなと思っていました。


しかし次の瞬間ヒロキが目にしたのは、ちょっと目を離した隙にいつの間に現れたのやら、見知らぬ青年と手を繋ぐアキヒコの姿でした。


「ああ、ヒロキ」


彼は今まで誰にも、ヒロキにすら見せたことのない笑顔で言います。


『やっぱり噂は本当だったんだな、こんな面白いヤツに出会えたよ』


「…ああそう」


ヒロキは辛うじてそう言葉を絞り出すと、低く唸るように返してそのまま踵を返しました。


―ヒロキ?と呼び掛けるその声から、一刻も早く逃げ出したかったからです。


ヒロキはそのまま脇目もふらず一人で勝手にずんずんと森の奥深くまで進んでいきました。




-------< この国のノワキは、ややこしい/続く>
(7.6up)

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