『あれ?誰かいる』


夢見心地の頭の中に、誰かの声が響きます。


「…うーん誰?」
「あっ、目が覚めましたか?」


ぼやけた視界に覗き込んでくる二つの黒の瞳。
アキヒコ…じゃなくって…誰?誰??


「わっ?!」


慌ててヒロキは飛び起きます。
いつの間にか眠ってしまっている間にこの家の主の一人が帰ってきてしまったみたいです。


「えーと、その…」


勝手に家に上がり込んだ挙げ句、ひとのベッドで寝てしまうなんて一体どう説明しましょうか。


道を聞くために訪ねたはずなのに、いきなりの初対面の印象の悪さ。


気まずさにただおろおろと目を泳がせるヒロキに黒の瞳の男は怒るでもなく、穏やかな表情で言いました。


「はじめまして、俺ノワキといいます!」
「はっ、はじめまして。俺はヒロ…?」


あまりののほほんとした雰囲気につられて挨拶を返そうとしたヒロキは、思わず自分の目を疑いました。
目の前のノワキと名乗る男の顔が、ずらずらっと同じ顔で七人並んでいるように見えたからです。
自分はまだ寝呆けているのでしょうか、思わずヒロキは聞き返しました。


「のわき…?全員?」


「はい。ご存知ないんですか?」


ノワキはきょとんとして答えます。


「この国の人間はみんな“ノワキ”っていう名前なんですよ?」





-------< この国のノワキは、ややこしい/続く>
(10.12up)

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