「なーアキヒコ」


アキヒコには大切なひとがいました。しかし相手にその想いを伝えることができないまま、彼の片恋は終わってしまいました。
彼は今、酷く失意に陥っているのです。


「なーアキヒコ、そんなヤツ忘れちゃってさ…」


俺と付き合えよ。
言えない言葉の先をヒロキは無理やり飲み込みます。
片恋の、その辛さをヒロキは誰よりも分かっているつもりでした。
ヒロキもまたアキヒコを十分過ぎる程想っていたのです。


「…つきあってくれないか?」
「へっ?!」


その、今の今まで無言だったアキヒコがようやく絞りだした突然の言葉に、ヒロキはびくんと反応します。


「つ、つきあうって…」


内心ぐるぐる動揺しているヒロキに構わず、アキヒコは暗い表情で町の最奥に繋がる森を指さしました。


「果ての森。伝承がある」


その森には古くからある不思議な伝承がありました。
森へと入り、出る時にはそのひとにとって運命のひとに出会えるというのです。
普段より自国はもとより、他国の事情に詳しく、それらを生かした創作文を常日頃綴っているアキヒコ本人からヒロキもまた色々な知識を聞かされていた為、多少なりともその噂を知っていました。


突然の提案にますます首を傾げるヒロキに、そこでようやくいつもの少しだけ意地の悪い笑みを浮かべてアキヒコは言うのでした。


「興味ないか?」






-------< この国のノワキは、ややこしい/続く>
(6.19up)

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