04
忍者学校に入学して3年経った。私も我愛羅も優秀で、飛び級で進学した。進学した先には我愛羅のお兄さんとお姉さんがいた。カンクロウさんとテマリさんと言うらしい。
私の能力のおかげで2人ともすぐに仲良くなれた。仲良くはなれたが私の能力のせいで今1歩踏み込めずにいる。なので友達になれているかは微妙だ。
「にしてもなまえは本当に敏いじゃん」
「あはは……」
敏いんじゃない。ズルしてるだけです、なんて言えたらどれだけ楽か。私は隣にいる我愛羅をチラリと見た。私は未だに自分の能力を打ち明けられずにいる。
……我愛羅は私のことなんて思ってるんだろう。友達とおもってくれてるのかな。我愛羅の感情は相変わらず寂しそうな色をしていた。
……
例の夕日が綺麗な穴場に1人佇む。“敏い”と言われた日にはバカみたいに落ち込む。そんな時にこの場所に来るのだ。そうすれば少し回復する気がして。
ふと視線を感じて横を見ると、少し離れた先に我愛羅がいた。もう何度目だろう。我愛羅は私が落ち込んでいると必ずここにきて慰めてくれた。言葉や態度にはださないけど、感情を視れる私には関係なかった。
我愛羅が私の横に来て黙って立つ。そして一緒に夕日を沈むのを見てくれる。私は横目で我愛羅を見る。赤毛が夕日に反射して綺麗だと思った。我愛羅の感情は心配そうにしていて、私はそれだけで泣きそうになった。
するとポンッと我愛羅が私の背中をたたいた。この行動は初めてで、我愛羅から感情が流れ込んでくる。
「大丈夫か?」「心配だ」「ひっそり落ち込むな」「なにかあったら俺に話せ」
そんな感情が流れ込んでくる。……たまらなくなった。涙がせり上がってくるのを抑えることができなかった。
急に泣き出した私に我愛羅はギョッと目を見開く。オロオロとどうすればいいのかわからないようだった。
「ちが……うの」
「?」
「私……聡くなんかない。本当はズルしてるの……」
「??」
我愛羅は訳がわからなさそうにする。分からないなりに私を慰めようと肩に手をおこうとした。
「触らないで!」
鋭く言い放った私の言葉に我愛羅は傷ついたように目を見張った。ああ、違う。我愛羅が嫌いだからじゃないの。それをわかって欲しくて、今までの罪悪感が募って、私は言ってしまった。
「私……視えるの。感情を視ることができるの」
「……は?」
「触ったり触られたりするとより深く感情が流れてくるの。なにを思ってるのかわかるようになるの……っ、ごめん、今まで感情盗み見てた……、ごめんっ!私は聡くなんかない……っ!」
「…………。」
ボロボロとこぼれる涙を抑えることができず、みっともない顔を見られたくなくて、手で覆う。我愛羅は黙ってなにも言わなかった。だから言わなくてもいいことも白状してしまう。
「あの日、我愛羅に話しかけたのも我愛羅のハンカチから、辛い、悲しい、さみしいって感情が流れてきて……、ほっとけなくて、同情から声をかけたの……、ごめん、酷いやつだよね……、ごめん、私は全然優しくないっ!!」
嗚咽すら抑えることができなくなって、それ以上は話せなかった。
我愛羅はポンッと私の頭に手を置く。……なんで?私の能力のこと話したのに、信じてないの?しかし我愛羅から流れてくる感情は私言ったことを信用している感情だった。
「……理由がとうであれ、あの日お前が話しかけてきてくれたことは、嬉しかった。」
「!!!!」
本心だった。我愛羅は本気でそう思ってくれていた。我愛羅の暖かな感情が流れてくる。私は思わず顔から手を外して我愛羅を見た。我愛羅の手が私の頭から離れる。
「き、気持ち悪くないの……?心を盗み視てたのに……。」
「まあ、確かにいい気はしないが……」
「でも、」と我愛羅は続ける。
「お前のその能力がなければ俺と友達になることもなかっただろう?」
「!!」
涙がとめどなく溢れてくる。我愛羅は許してくれた。我愛羅は優しい。今まで触れたどの心よりも。
「だが、心を視ない練習もしろよ。常時見られるのは気分が悪い」
「……っ、うん!」
練習する。そうすれば私は胸を張って我愛羅の友達だと言えるようになるだろうから。
← →