▼05.
「え、我愛羅誕生日もうすぐなの!?……ですか!!?」
お正月も終わり、カンクロウさんとテマリさんに会った時にたまたまそんな話がでた。
「お前、敬語苦手なら無理にしなくていいぞ」
「いや、商人の娘として敬語は大切で……。って、そんなのは今どうでも良くて!あと8日で誕生日って本当ですか!?」
うんうんと2人は頷く。もう!我愛羅の奴め!何故言わない!!
「私!我愛羅の誕生日プレゼント選んできます!!」
私は市場に向かって走り出す。2人は「頑張れよー」なんて間の抜けた声で見送ってくれた。
……
市場に着くと我愛羅の誕生日プレゼントになりそうなものを探す。ていうか我愛羅って何が好きなんだろう?はたっと思い至る。私は我愛羅について何も知らない。友達なのに、それって悲しいな。よし、これからは我愛羅のこともっと知るようにしよう!と私は決意した。
ある店で足が止まった。そこには綺麗な勾玉のアクセサリーやストラップがたくさん並んでいた。一際目を引いたのは我愛羅の目の色と同じエメラルドグリーンの小さな勾玉のブレスレットだ。目を輝かせて見ていると、店主らしき人が出てきた。
「お嬢ちゃん、それ気に入ったのかい?」
「はい!私がつけるわけじゃないけど、友達にあげたいなって」
「プレゼントかい?それはいいね!勾玉はお守りの意味もあるんだよ」
そうなんだ!お守り、我愛羅は忍者になる。勾玉も小さいし、ブレスレットなら邪魔にはならないかな?そう思って値段を見てみると……
「1200両……」
私の手持ちは、と確認したしてみると、20両しかなかった。全然足りない……どうしよう。しかしあれがほしい……。なら……!
「おじさん!私絶対にお金用意するからあのブレスレットとっておいて!ください!」
「わかった、お嬢ちゃんのために取っておくよ」
店主はショーウィンドウの中から勾玉のブレスレットを取って奥に消えて行った。よし!宣言したんだから私もお金用意しないとな!と私は家まで走った。
……
「お父さん!お金ほしい!!」
お客さんが途切れたタイミングでそう言うと、お父さんは不思議そうにした。しかし一瞬で、次の瞬間にはニヤリと笑った。
「いくらだ」
「1180両!」
「ほー、中々の大金だな。」
お父さんはしゃがんで私の頭を掴む。
「いいか、金を稼ぐには覚悟がいる。お前にあるか?」
「なんでもする!!」
お父さんは「よし!」と言って私の頭を離した。そしてついてこいと顎で道を示す。店の奥に行くとそこにはたくさんの梱包された商品があった。
「お客様にお届けしなきゃいけない商品だ。お前届けれるか?」
「やる!!」
そして私のバイトづくしの8日間が始まった。
……
最近なまえは公園に来なくなった。僕は1人ブランコに乗りゆるく動かす。ギイっと音が鳴った。なまえが来なくなった理由はわかっている。
「僕のこと、嫌いになったんだ……」
僕は化け物だから、今まで友達でいてくれことが奇跡だ。ポタポタと足元の地面が点を作る。気づいたら僕は泣いていた。カンクロウやテマリに相談してみたら「サプライズかもしれないから言えない」と訳の分からないことを言われた。気づけば夕方になっていた。公園になまえ以外の子供はたくさん来たけど、誰もブランコには近寄らなかった。
「いたーー!!!!」
「!??」
何事かと顔をあげるとそこには笑顔のなまえが公園の入口の方に立っていた。なまえは僕の方へ駆け寄ってきた。
「我愛羅この時間帯は家にいるはずなのにいないんだもん。めっちゃ探したよ」
「え?」
探した?なんで??僕のこと嫌いになったんじゃないの?なまえは息を切らしていて、駆け回って僕を探してくれたことがわかる。
「我愛羅目元赤いけど、どうしたの?」
「……なんでもない」
僕は目元をグイグイ擦った。なまえは少し心配そうにしていた。
「……僕に用があるんじゃないの?」
絶交の宣言だったらどうしようと、少し乾いた目がまた潤む。なまえは忘れてた!とポケットから何か取り出した。
「はいこれ!」
「?」
差し出されたものを受け取る。それは可愛い巾着袋だった。中になにか入っているようで、巾着袋が少しだけ不格好に膨らんでいた。
「開けてみて」
「??」
不思議に思ってなまえを見ても、なまえはニコニコ笑ってるだけで答えを言ってくれない。不審に思いつつ中を開けて中身を取り出してみる。それはエメラルドグリーンの小さな勾玉がついたブレスレットだった。
「……なに、これ?」
「えー、こちら天然石使用の勾玉のブレスレットでございます!なんと!紐の部分は長さを調節でき誰にでもつけられるといった優れ物!」
なんでセールス口調なんだろう。なまえはまだ「品の良い勾玉は」とか続きを言ってる。
「そうじゃなくて、」
「?」
「なんで僕にくれるの?」
僕のこと嫌いになったんじゃないの?なんで嫌いな子にこんな素敵なものをくれるの??なまえはにししと照れくさそうに笑った。
「我愛羅今日誕生日でしょ?」
「え」
そういえば朝夜叉丸に「誕生日おめでとうございます」って言われた気がする。なまえのことで悩みすぎて頭に入ってなかったけど。
「我愛羅今年から忍者学校に行くし、危ないことも増えると思うから、守ってもらえますようにってそれ……。ギリギリになってごめんね。お金足りなかったからお父さんに働かせてもらってお金稼いでたの。朝から晩まできつかったー!」
じゃあ、じゃあ、なまえは僕のこと嫌いになったんじゃなくてこれを買うために働いてたから公園に来なかったの?僕のために公園に来れなかったの?そう思うと嬉しさと安堵となにかよくわからない感情でぐちゃぐちゃになって、また涙が溢れた。
「え!?ちょっ、泣くほど嬉しかったの!??」
なまえは焦って僕の目元をグイグイ拭う。
「そーだ!まだ言ってなかった。」
「?」
「誕生日おめでとう!我愛羅!!生まれてきてくれてありがとう!」
なまえは眩しいくらいの笑顔でそういった。僕は化け物で、夜叉丸以外に優しくしてくれる人なんていなくて、ずっとずっと生まれてきたことを疎まれてきた。生まれてこなければよかったのかと何度も何度もなやんだけど、今日初めて生まれてきてよかったなんて、思った。
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