▼04.

「あー!化け物と歩いてたやつだ!!」

「は?」

その日はお父さんのおつかいを頼まれていて1人だった。いきなり3人の子供たちに指をさされた。口々に「よくあんな化け物と一緒にいられるよな!」と私に罵声のようなものを浴びせた。

「……その“化け物”が誰かはわからないけど、もし我愛羅のことだったら許さないから」

「決まってんだろ!あいつじんちゅーりきの化け物だぜ?いつ殺されるかわからないのによく一緒に……」

最後までは言わせなかった。私は胸ぐらをつかんで睨みあげる。

「な、なんだよ!」

「我愛羅のことよく知りしもしないくせに!腹の中だけで判断してんじゃねーよ!!」

「う、うぜーんだよ!!」

そいつは私を突き飛ばす。私は衝撃で尻餅を着いた。

「……手をだしたのはそっちが先だからね!」

私は突き飛ばしてきた子供の鼻面に向かってグーパンチを繰り出した。その子は鼻血をだして倒れる。

「こいつよくも!」

「たっちゃんになにすんだよ!!」

残りの2人が私に襲いかかってくる。私はそれを躱して2人に蹴りを繰り出す。キャラバンは盗賊に襲われたりもするので、最低限自分の身を守るために護身術のようなものを仕込まれる。忍者学校に行ってない歳の子供になら負け無しだろう。実際、負けなかった。3人の子供たちは泣きながら逃げて行った。私はフンッと鼻を鳴らした。やはり無傷とはいかなくて、殴られた箇所をさすった。痣になるかもしれない。

「なにやってんだよ」

「カンクロウさん……」

カンクロウさんが呆れたように近づいてきた。

「見てたんですか」

「お前がひとりを殴り飛ばして奴らが泣いて逃げてくとこまでな」

ほぼ最後のところを見られたようだ。私は苦笑した。

「手当、してやんじゃん。俺ん家来いよ」

「え、これくらい平気……」

「いいから」

カンクロウさんは私の手を取って歩き出す。私もそれひ引きずられるようにカンクロウさんの後をついて行った。

……

「ちょっとしみるかもしれねーけど……」

カンクロウさんは私が尻餅をついた時に作った掌の傷に向かって消毒液をかけた。

「…………。」

我愛羅と一緒に歩いただけであんなことを言われるなんて……。私は浴びせられた罵声を思い出す。すると涙がじわじわと溢れてきた。

「!?。どうした、痛かったか?」

「ち、違うんです……」

ひっくひっくと嗚咽が漏れる。ポロポロ涙が出てきて止まらない。少し我愛羅と歩いただけであんなこと言われたんだ。じゃあ我愛羅は?もっと酷いことを言われつづけてきたんじゃないか?“化け物と一緒に歩いていたやつ”。そんなことを言われただけで胸が抉られるようだった。我愛羅は何度も何度も傷ついてきたんだ。人々の冷たい、怯えたような、憎悪のような視線の数々。きっと私だったら耐えられない。ぐちゃぐちゃな考えをカンクロウさんに伝えるとカンクロウさんは嗚咽が混じって聞き取り辛かっただろうにちゃんと聞いてくれた。

「そっか……そうだな。」

カンクロウさんは私の頭に手をのせて緩く私を撫でてくれた。

「ありがとうな、我愛羅と一緒にいてくれて」

カンクロウさんは私が泣き止むまで頭を撫でてくれていた。

……

「どうしたの!?その怪我!!」

翌日、我愛羅と会うと痣を指摘された。私はVサインを我愛羅に寄越した。

「めいよのふしょう!」

「???」

昨日、家に帰った後にお父さんたちにも同じことを聞かれて「友達が馬鹿にされたからケンカになって負った傷」だというと、「名誉の負傷だな!」と嬉しそうに言われたのを漢字もわからず引用しただけなのだが、我愛羅も意味は分かっていないらしく首を傾げていた。




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