誰にも届かない
...11


行き詰った二人は、それ以上模索するのをやめた。

「私……みんなが無事か、見てくるね!」

と言って、リシュは部屋を出て行った。
部屋を出て、廊下を歩く。
歩いていくと、年も様々な子供達とすれ違う。

「あ! リシュ姉!!」

と皆再会を喜んでいた。
子供達は、みんな笑顔だった。

数分後。リシュは、部屋に戻ってきた。
シャイレは、二つあるベッドの手前のベッドにもたれかかっていた。
着ていたベージュのコートを脱いで、羽織っていた。
目を閉じて、俯いていた。
リシュが部屋に入るとすぐに顔を上げた。

「あ……遅くなった!ごめん!」

シャイレは首を横に振った。

「シャイレは……ここにいて大丈夫だって!!」

シャイレがリシュを呆然と見つめる。
リシュにしか悟れないほど微かだが、驚いていた。
また、深々と頭を下げた。

「後ね。夕ご飯です!」

シャイレはリシュを見てまた呆然とする。

『い、いい……のか?』

「大丈夫です。誰でも大歓迎なのです」

リシュはシャイレに微笑みかけた。
シャイレは、相変わらず無表情のままだった。

必死で笑顔を作ろうとしていることに、リシュは気づいていた。


突然現れたシャイレに子供達は興味津々だった。
軽く俯いたまま一言も発しないので、なおのこと興味津々だった。

銀色の髪、青い瞳。凄く整った精悍な顔立ち。

みんな凄くキラキラした目でシャイレを見ていた。

シャイレの方は、あまりにも視線を注がれるので戸惑っていた。
好意的な眼差しを向けられたことはなかったようだ。(本人の記憶にないだけかもしれないが)

戸惑ったシャイレはただ黙々と目の前の夕食を口に運んでいた。
リシュはそんなシャイレを暖かい目で見守っていた。

シャイレはうろたえたのか、心の中でさえ一言も発さなかった。
なんとなく何を思っているかはわかったが、はっきりと言葉ではリシュに伝わらなかった。

リシュは、まだ用があったらしく、シャイレは一人で部屋に戻ろうとした。

シャイレに興味津々だった子供の何人かとすれ違った。
シャイレは何を尋ねられても黙っているが、言われたことだけはじっと聞いていた。
その間ずっと無表情だった。
何も感じていないかのようだった。真っ白な心のままシャイレはいた。

リシュ以外には感情を抱くことを許さないのだろうか?
ただ、癖として、習慣として感情を抱かないのだろうか?

きっと、リシュ以外に気持ちが伝わらないからではない。
リシュに対する好意とかそういうものではない。
本人もわからない何かがあったのだろう。

また部屋に一人きりになってしまったシャイレ。
さっきと同じように、ベッドにもたれかかってコートに包まって、目を閉じ、俯いた。



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