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 第1話

第1話〜君も今日から職業:勇者〜

魔王による侵略宣言がされてから7年。世界中のあちこちでは、魔王軍の侵攻を食い止めようと日々戦いが繰り広げられている―、という訳でもなく。

あの宣言が出された後、世界中の為政者たちは凶暴化した魔物の対応に四苦八苦していました。何せ今まで戦いらしい戦いをしたことのない国の兵たちです。次々に襲って来る魔物をせいぜい押し返すだけで、倒すまでには至りません。
次第にどの国も、国内外問わず、腕のたつ戦士を雇い魔物を退けるようになっていきました。彼らは雇った戦士たちに[勇者]の称号と共に、その活躍に応じた報酬を与えました。

月日がたって、勇者は職業となります。王の認定した者ならば誰でもなることができ、世界各国どこの国でも出入り自由。望むならば平民の出であっても騎士になれる。そのかわりとして求められるのは、確かな魔物退治の腕、つまりは強さ。
王の求める強さがない限りは、たとえどんなに高位の貴族であってもなることはできない、それが『勇者』という職業なのです。


しかし、どんなにハードルが高くとも勇者に憧れる人は大勢います。

森に囲まれた小さな村…サグナ村にもまた、そんな冒険者志望が一人。
村はずれにある小屋、薬草の束やら大鍋やらがひしめく小屋の中で、一人の少女が一枚の紙を眺めながら呟きました。
「また一人、旅立ったようね。……早くアレを、実行に移さなきゃ」
少女の見つめるその紙には、近隣の村の名前と、何名かの名前。
「冒険者…絶対に、なるんだから」

呟いたその言葉を聞いたのは、机の上に置かれた水槽に潜む蛙、ただ一匹だけでした。



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