「それじゃあ、各自作品づくりに励んで。」
 朱鳥先輩の半ばやけのような声で合宿はスタートした。
あたしは初めて詩を作るのだから、誰かに教わりたい。
だけど、文芸部には詩を専門としている先輩がいない。
仕方ないよね。いないのなら。

「なるせんぱい」
「亜良ちゃん?」
「カケましたか?」
「まだ全然。3こ作ったぐらい。しかも駄作。」
 亜良ちゃんは「ワたし、まだです。がんばります」と言って
ごしごしと消しゴムを使っている。
ちらりと見回してみたら、梓先輩が煮詰まってるみたいだった。
葵先輩は約500個の季語が載っているという辞典を片手に
つらつらと流れるように書いている。
朱鳥先輩は窓を全開にして冷たい空気をいっぱいに吸いこんでいる。

 「おつかれさま。」
沢村先生がプリンを片手に現れたのはそれから30分ぐらい経った時だった。
朱鳥先輩はチラリと視線をやっただけで何も言わず、
かわりに葵先輩がお礼を言った。
「煮詰まってるみたいねぇ。梓、とりあえずキャラクターメモを
作ったらいいんじゃないかしら。
細かいことまで決めたら、後はキャラが勝手に動いてくれるから。」
「……。はい。」
 梓先輩が半信半疑で返事をし、先生は朱鳥先輩に何やら耳打ちした。
「なっっ」
「本当よ。」

 朱鳥先輩は無言であたしの横を通り過ぎ、出て行った。
誰も追いかけようとはしなかった。
追いかけよう。そう思って席をたつと
「止めておくのだな。」
と横から声がかかった。

今まで一言も発することもなくスナック菓子をほおばっていた七瀬さんだった。
「なんで!?」
「アスカの家庭の事など女、おまえにわかるまい。」
「は!?」
「おまえはぜいたくなのだ。」
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