秀歌side1



―青樹 秀歌―
 
……なに、これ。

教室で、突如上がった海堂さんへの蔭口。
私自身、結構孤立するタイプだけれど、まさか、クラス替えの翌日から
蔭口が叩かれる光景を見た事はなかった。

「……。」
「ねぇ、聞こえてますぅ?」
 その方向を見ると、あれは……新しく葵依と友達になったとかいう人?
「ちょっと、知亜紀……」
「なに?菫、いい子ぶってんのぉ?」
「べ、別にそんなんじゃないけどぉ……」
「ねぇ、待ってよ2人とも。」
「もぉ、華まで何言うの?実際、このクラスの誰もが思ってる事でしょ?
包帯巻いて、目は青だし。ってか、昨日の自己紹介なに?麗衣ちゃん困ってたじゃん。」

 確か、昨日海堂さんは一言も言葉を発しなかった。
藤先生が「こいつは海堂海月っつーやつだ。 ……んじゃ、次。太田 悠樹。」
と、フォローしてたっけ。

「ねぇ、そんなに麗衣ちゃんの気を引きたい訳?麗衣ちゃんはさぁ、大人でカッコいいし、面倒見がいいんだよ?
そんな良い人を困らせて、いったい何が楽しいの?」
 ってか、何この3人。藤先生のファンかよ。

“大人でカッコいいし”って。……ハッ。結局人を見た目でしか判断してないじゃない。
藤先生の顔が好きなんでしょ?内面なんて、知らないくせに。

 かなりの時間が流れた、と思う。
気まずい空気だし。息がつまりそう。葵依はいないし。
止めないといけない。 そうは思っているけれど、多分次の標的が私になるだろう。
蔭口なんか、怖くは無い。でも、この状況から海堂さんを救う術を私は持っていない。

「ねぇ、なにしてるの?」

 それからまた時間が流れたけれど、やっと葵依が来た。
心底不思議そうな顔をしていた。

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