子兎と爆弾少年の過去
まだまだ夏の暑い日、椎菜はクーラーで涼もうと思い部屋の階段を上っていた。
部屋のドアを開けようとすると鈍い音が聞こえ、何かにぶつかってしまったようだ。
『?なんだろ』
見るとそこには、ランボがぐっすりと眠っていた。
とりあえず場所を移そうと思い、ランボを抱き上げ部屋に入るとそこに、浴衣で素麺をすすり日本の夏を十分満喫している家庭教師の姿を見つけた。
「ちゃおっす」
『あたしにも素麺ちょうだい!!』
「はいどうぞ」
『ありがとービアンキ!………えっとこれは?』
椎菜に渡された素麺は毒々しい紫色で虫がうじゃうじゃしている。
想像しただけで吐きそう………………
だがビアンキはまるで悪気はない。それどころか、頬を紅く染めモジモジとしている。まるで恋する乙女だ。それはまだいい。
問題はその反応を椎菜に向けているということ。もちろん、友情の域は超えない。
いや…いいよ、いいけどさこれは死ぬんじゃないかな。うん純粋に好意は嬉しいよ。好意はね。
「椎菜のために愛情込めて作ったの」
むしろ殺傷力が上がってんじゃん。
ちょっ……リボーンニヤニヤしてないで止めてよ!!!!
ピーンポーン
よッしゃーーーーー!!!!!!ありがとう扉の向こうの誰か!
玄関に行きドアを開ける。
「椎菜さーーーんっ!」
『あ、隼人じゃん!どうしたのー?』
「このスイカめちゃくちゃ甘いらしいんスよ!一緒にどーすか?」
『マジでー!?ありがと』
獄寺は椎菜にスイカを渡そうとしたが、ふっと椎菜の背後の人物を見てしまい手に持ったスイカを落としてしまった。
が、間一髪のところで、反射的に椎菜が受け取めた。
「あ……アネキ!!」
『Σえっ!』
「隼人」
「はがぁっっっ!!!!」
獄寺は咥えていたタバコも落とし、腹を抑えて膝をついた。
『は……隼人?』
「失礼します!!」
『ちょっ…えー』
獄寺は腹を抑えながら走り去ってしまった。
驚く椎菜。
「いつもあーなのよ、変な子」
『この会話から行くと、隼人とビアンキって兄弟?』
「そーだぞ、腹違いのな」
言われてみればちょっと似てるかも……
椎菜は胃薬をつかみ獄寺を追いかけた。
並盛神社まで行くと、木にもたれ掛かり苦しそうにする獄寺の姿があった。
『隼人!!大丈夫?』
「椎菜さん………アネキとは8歳まで一緒に住んでました」
獄寺は自分とビアンキの子供の頃のことを話し始めた。
『!?』
「うちの城では、よく盛大なパーティーが行われたんですが
オレが6歳になった時、初めて皆の前でピアノを演奏することになったんです」
城って金持ちだなオイ!!しかもピアノって以外。え、まさかのお坊ちゃまなのか?
「その時アネキが初めて、オレのためにクッキーを焼いてくれました。
それがポイズンクッキング一号でした―…
後でわかったんですが、アネキは作る料理がすべてポイズンクッキングになる才能の持ち主だったんです」
それ、才能としてどうなの………
あり得ないでしょ。
「もちろんその時の演奏はこの世のものとは思えないものに」
『……………』
「でもそれは、ほんの序章でしかありませんでした。
そのイカれた演奏が高く評価されてしまったのです」
音楽ってよくわからないな………
「気を良くした父は発表会をさらに増やしそのたびにアネキにクッキーを作らせるように…………」
父親ヒドッ!!聞いてるこっちが悲しくなってきた。
「その恐怖が体に染み付いて今ではアネキを見るだけで腹痛が・・・」
『隼人、ビアンキのこと嫌い?』
「ええ、大嫌いです」
これには苦笑するしかなかった。
でも――――――――…
『隼人さ、ビアンキは別にあんたのこと嫌いで作ってたわけじゃないじゃん。好きだから作ってたんだよ。だってそうでしょ?全部隼人のためにしていたことなんだから。』
獄寺は言われてみて納得してしまった。
姉はいつも自分のためを思いクッキーを焼いてくれていたことを思い出した。
『すぐにとは言わないけど、隼人は姉弟に会えるんだから仲良くしなよ。
少しずつでいいからビアンキのこと受け入れてあげて。』
やっぱり優しい人だと獄寺は思う
それから二人は家に戻って行った。
家に帰ると、ビアンキが出迎えてくれたけど獄寺は倒れてしまった。
急に慣れるのは無理みたいね。
そのまま倒れた獄寺を担ぎ椎菜は自分の部屋のベッドまで連れて行った。
部屋に入ると、待ってましたと言わんばかりにランボが足元に飛びついてきた。
「シナ〜ランボさんと遊ぶんだもんね!!」
『あ〜わかったわかったちょっと待っててね』
「今すぐ遊べ〜」
ぐずりだしたランボは、10年バズーカを取り出し自分に向けて打ってしまった。
この後ビアンキに10年後ランボがポイズンクッキングUを食らわされていた。
『ランボ!大丈夫!?しっかりして〜』
「10年後の医療なら助かるかもな…」
なんでもビアンキの元彼、ロメオ?に10年後ランボがそっくりだったらしい。
しかも、元彼とは別れる直前、とても険悪だったらしい。よく元彼を思い出しては腹立ててたんだそうだ。
しばらくして起き上った獄寺にランボのことを話せば、元彼の死因は食中毒だったことを聞いた。
真っ青になる獄寺を見て悟った。
―――――ビアンキ、ポイズンクッキングで殺したな………
ちなみにリボーンの「土用の丑の日にうまいうなぎが食いたい」という一言で、ビアンキは町を出て浜名湖に向かったらしい。
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この日の夜の話、
『大体さー兄妹に会えるのになんで仲良くしないのかナ?生まれてからずーっと会いたいと思っている人間だっているのにネ。ほんと世の中って不公平だと思うんだヨ。』
そう言うと一気に間合いを詰め蹴りをかます。
それをリボーンは間一髪でよけた。
「お前には兄妹なんていねーだろ」
リボーンが銃を打っても椎菜は軽々とよける。
『ふふっリボーン、何も私のことだなんて一言も言ってない。勘違いするナ』
「じゃあなんでお前…………」
―――そんなに悲しい顔をするんだ??お前は何を考えているんだ椎菜………
月明かりに照らされている彼女は、泣いているように見えた。
『なんて……忘れてね、ただの独り言だから。それじゃあ続けましょうか。』
口元に笑みを残し彼女は再び地面を蹴り、戦い〈アソビ〉始めた――――――…