パイソンにいたんといっしょ | ナノ
つづいてしもうた




「あー無事に着いた。これで安心」
「そうですね。残党や魔物と遭遇せずに済んで良かったです」

拠点の番兵達は子供を連れて戻って来たパイソンに目を丸くしていたが、それがルカだと分かるや否や「とんだ厄介に巻き込まれたもんだ」と気の毒そうに彼に声を掛けた。

向かったのはルカの部屋。
パイソンとしては勝手知ったる自分の部屋が良かったのだが、今大変なのはルカの方なので譲る事にした。

「んじゃ、ゆっくりしようぜ」
「でも…」
「非番貰ったと思えば同じでしょ」

何かできる事があるのではないかと言いかけたルカの言葉を遮って。部屋の主に確認もせずに備え付けの椅子にドッカリ座り、パイソンは既に寛ぎモードに入っている。

「……では、お茶を淹れてきましょうか」

それを見たルカも諦めて、寛ぐことに決めたらしい。

「あー、俺の分も頼むわ」
「勿論」

微笑んで簡易キッチンへ向かって行くルカを見送り、ひとつ欠伸をしてからパイソンはハッとした。

(やべっ!今一人で茶なんて淹れさせて何かあったら大将が怒り狂うぞ!)

戦場以外でのアルムのルカ溺愛ぶりは見ていて呆れる程だ。子供の姿になったのならその度合いは間違いなく加速するだろう。何しろお兄ちゃんなんて呼ばせようとするくらいだ。

勝手の違う体で道具の扱いを誤って、火傷でもさせてしまったら…。想像するだけでゾッとする。
慌てて後を追うと、丁度キッチンから出てきたルカと鉢合わせた。

「あれ?どしたの。茶淹れるのやめた?」
「淹れたいのは山々なのですが、少々お力添えを頂きたく…」
「いいよ。俺もそのつもりで来たし」
「ありがとうございます」

二人して簡易キッチンへ入る。加熱器の上のケトルや収納庫の高さを見て、パイソンも理解した。

(あー…ナルホドね)

今のルカの身長は、流し台よりほんの少し高いか同じ位。準備をしたくても届かない。
まずパイソンはケトルに水を入れて火にかけた。

「茶葉は届きますので、2段目の棚からポットとカップを出していただけますか?」
「はいよ。あー、淹れるのも俺がやる」
「心配には及びません。向こうのテーブルで、充分気を付けてやりますから」

パイソンが怪我を危惧している事もしっかりお見通しらしい。
それに、手伝わせているのにそこまでやらせる訳にはいかないとも思っているのだろう。ルカの考えそうな事だ。

「練習してフォルスのやつに淹れてやろうと思ってさ。だから教えてくんない?」
「そういう事でしたら、喜んで」

動機を聞いて、ルカは快諾する。
パイソンの方は、無事に事が進んで胸を撫で下ろす。咄嗟に考えたにしては上出来と自分を褒める。尤も、フォルスに淹れてやりたいというのは本当だったのだけれど。



思った以上に書くのが楽しかったのでしばらく続けます

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