ショタルカくん | ナノ
ショタルカくん
「呪いに似た魔力…を浴びたんでしょうか?」
致命傷を負った妖術師の、死力を振り絞った一撃を浴びたルカ。
命に別状はなかったのだが、何故か体が縮んでしまっていた。
小さくなった彼をシルクがまじまじと見つめ、発した言葉が冒頭の台詞である。
「…恐らくですが、遺された魔力が無くなれば元に戻れるかと…」
「魔力が無くなるまでこのまま…ですか?」
困ったようにシルクに尋ねるルカ。辛うじて精神はそのままらしく、いつも通りの丁寧な口調。大きく見開いた瞳には、これでもかと涙を溜めている。
堪えてはいるようだが、子供の体になった事で感情がそのまま顔に出てしまうようだった。
「これでは戦線に出るのは無理だな…元に戻るまで拠点で待機していてもらおうか」
小さな背丈の目線に合わせてしゃがんだクレーベがルカに告げる。
泣きそうになっている事に触れないのは、彼の優しさだろう。
「そうですね…。子供の姿ではただの的ですから、大人しくしている事にします」
「引き返すったって…一人じゃ無理でしょ。拠点だって絶対安全、ってワケじゃないし。俺、付いててやってもいいよ」
「パ、パイソン…お前がそんな事を申し出るなんて…。ようやく騎士を目指す者としての自覚が…!」
「へーへー」
大いに勘違いをしているフォルスに訂正もせず否定もせず、適当に返事をするパイソン。
彼としては、戦線と子守りを天秤に掛け楽な方を取っただけなのだ。
本物の子供の世話なら真っ平御免だが、ルカは見た目だけ。自分の事は自分でするだろうし、無茶な事も絶対にしない筈。
「パイソン、一人で平気ですか?今の私は足手纏いにしかなりませんよ?」
「ん、ヘーキヘーキ」
行軍を始めてから間もないし、自分一人でも充分ルカを守って拠点に戻れると踏んだパイソンは大丈夫と返事をしてみせる。
「じゃあパイソン、ルカの事は任せたよ」
「りょーかい」
「本当は僕が一緒に付いてあげられればよかったんだけど…」
目的地が変わってしまったアルムとルカは、暫しの別れだ。
名残惜しそうにルカを見つめるアルムの姿はまるで初めて託児所に子供を預ける親のよう。
ルカもまた同じようにアルムを見つめていたが、やがて見送りの言葉を紡ぎだした。
「アルムくん、行ってらっしゃい。お気をつけて」
「ルカ!!!」
「はっ…、はい!」
突然声を荒げて名前を呼ばれたルカは、肩を竦めて返事をする。
アルムがこんな声を出す事はほぼないため、他の仲間達も目を丸くして彼の方を見つめている。
「アルムお兄ちゃん、でしょう!」
アルムが壊れた。
ルカとエフィを除く全員、頭の中で同じ事を思ったのだった。
17/7/10追記 続きができました
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