希望はない。 | ナノ

(02)


「は?幽霊屋敷(ファントムハウス)?」
『日本だとそれ系の話はいっぱい聞くから心当たりがないなぁ』

生徒が皆寮に帰った、下校時刻過ぎの正十字学園特進クラス教室。週番で遅くなってしまい、教室で日誌を書いていると、この二人が突然扉から現れた。
正直学校に来るとか勘弁してほしい。クラスメイトにバレたらどうしてくれる。
やって来たのは現聖騎士のアーサー・A・エンジェル。そして、上級監察官の霧隠シュラだ。この場にいる私含む三人とも、上一級祓魔師である。
なんでも次の任務を私が行うことになったので、打ち合わせに来たらしい。日本に存在すると言われているらしい幽霊屋敷だが、残念ながら、今までに私の情報網に引っかかったことはなかった。渡された任務書の赤文字からして、危険な任務の可能性大だ。

「今までは噂の中だけに存在した悪魔だ。それをこの度、本部が発見した。噂だけなら色々と聞いたことがあるんじゃないか?どれも信憑性には欠けるがな」
「噂?有名なのか?」
「インターネットでだな。少女の霊が出る、一度入ったら二度と出れない、地獄に落ちる…それから、」
『ああ、昔、殺人事件があったっていう』
「なんだ、知っているじゃないか」

満足気なアーサーの言葉に私は頷き、うええ、と声を上げてシュラは顔を歪めた。
どうにもきな臭い話題しかないところだ。そんなものにこれから巻き込まれなければいけないと知れば、どうしてもそんな声の一つや二つも出したくなる。

「んじゃ、そこにいんのは殺された奴の霊(ゴースト)?」
「残念ながら、噂も幽霊屋敷も、事実確認は取れていない」

本当に未開の地らしい。

「そこで今回、最も目撃談の多い夏に調査、及び討伐の命令が下った。以前、その地方を前聖騎士が訪問しているとのことで、瞳子、お前が任命されたらしい」
『訪問したことがある?獅郎さんが?……こじつけじゃん』

私への嫌がらせは除くとしても、どれだけみんな幽霊屋敷に行くのが嫌なんだ。
学生の夏休みを棒に振るつもりなのだろうか。

「まあただでやれとは言わん。成功した暁には、四大騎士とは別の席を用意すると」
『ああ、中国支部から四大騎士に一人引き抜きたいって話か』
「それをどこで…」
『ルーインが言ってた』
「四大騎士同士のコミュニティがあるということか…」
『私は別に何でも構わないよ。他の四大騎士が賛成するならだけど』

適当な付き合い方をしてきたつもりはない。
以前はまとまりがなく、四大騎士同士、コミュニケーションを図るというようなこともなかったけれど、今は違う。時間を有効に使う。情報を共有する。その大切さを時間をかけて教え込んだのだ。そのコミュニティの一角を失い、新たな人材を迎える。
なんともめんどくさそうな話だ。
表情を歪めたアーサーを見て、このおじさん、仮にも一度は聖騎士の候補に上がった私を、年下のマセガキと甘く見ていたんだなと思う。ざまあみろ、だ。

『割と気に入ってるんだよ、あのコミュニティ』

任命書に自分のサインを書き記し、アーサーの手元へ返す。

『四大騎士は四枠ある。やり方はいくらでもあると思うけどなぁ』

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