調査兵団にあの青年がやってきて数日。巨人に姿を変えることができる、得体の知れない人間という噂は着実に広まり、兵団内には妙に緊張した空気が流れていた。
―――そんな時だった。私が、リヴァイさんからその青年の監視役を仰せつかったのは。

「秋野兵士長補佐はどうして、調査兵団に?」

ガキ共の相手をしてやれと、夜ハンジさんの手伝いをしているところを連れ出され、イェーガーくん、アッカーマンさん、アルレルトくんと一緒に紅茶を振舞われた。
数分して戻ってきたハンジさんに今度は連れ出されるリヴァイさんを見送って、少しした頃。イェーガーくんはそんな質問をしてきた。
それにはきっと、いろんな意味が込められているのだろうと察する。
東洋人にとっては危険の高いローゼやマリア。安全と言われるシーナから出てきた変わり者。女でありながら高い役職につき、いろんな噂もついてまわる。
そしてなぜ、最も危険で死亡率の高いこの兵団にやってきたのか。純粋に考えてみると、あまり覚えていないものだった。

気を悪くしたと思ったのか、弁解するアルレルトくんに、そうではないと返した。

『考えてた。…思い出せないもんだね』
「では、秋野兵士長補佐はなぜ、巨人を倒し続けておられるのですか?」

アッカーマンさんの言葉が、頭の中に鈍い痛みを伴って響く。


―――わたしはなぜ、巨人を倒し続けている?






「理由」



 



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