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朝からテンションの高い龍弥から電話があり
ドラマが決まったと聞かされた。
私の役は沖田総司…つまりは新選組の話らしい。
新選組を題材にした恋愛ドラマらしく、
内容的には沖田は毎回出るような役じゃない。
でも役を貰えるだけでありがたい。
私は龍弥の提案で殺陣を習いにいく事にした。
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私の先生になる人は女性らしい。
私は長い髪を後ろに1つ縛りにし、
袴と胴衣を着て準備万端にして先生を待つ。
確か名前は…。
「よし。やるか」
「お、お願いします!」
「フッ…そんな固くならなくても大丈夫だろ」
「き…緊張してます」
「小夜なら余裕」
「真希さん…」
先生の名前は禅院真希さん。
私より1つ下でこの道場の師範をしている。
名字で呼ばれるのが嫌いらしく名前で呼ばないと教えないと言われてしまった。
女性だけど物凄いカッコイイ。
「んじゃ、やり始めるか」
真希さんがそう言った瞬間、
竹刀を持って踏み込んで来る。
私は近くにある竹刀を掴みギリギリ受け止める。
咄嗟に身体が動き私は不思議に感じる。
昔もこんな事をやっていたような…
でも殺陣を習うのは初めてのはず。
「身体が勝手に動いたか?私が教えられるのは実践だからな。怪我しても文句言うなよ」
「は、はい!」
そこから真希さんとの練習は楽しかった。
自分の身体じゃ無いみたいに身体が動く。
そして何故か懐かしい…。
練習は外が暗くなるまで続いた。
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「いたた…」
「頑張った勲章だな」
私のお腹には痣が出来ていた。
色々考えてくれたのだろう攻撃は全部お腹を狙って来ていた。
「ありがとうございました。凄く楽しかったです」
「…今の仕事が嫌になったらいつでも来いよ。面倒見てやる」
そう言って真希さんに見送られ私は家路についた。
真希さんカッコよかったなぁ…。
男性役貰った時は真希さんを手本にしよう。
お腹は真っ赤だし痣だらけだけど
自分の中でかなりいい経験になった。
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「ただいまー」
「お帰り、怪我しなかった?」
「…怪我はしたけどいい経験になったし何より楽しかったよ」
私がそう言うと謙弥は顔色を変えた。
「怪我しないように頼んだのに怪我した?」
「や…私がうまく立ち回れなかっただけで」
「ちょっと出かけてくる」
そう言って謙弥は家を飛び出して行った。
真希さんには申し訳ない事したかも…。
私は心の中で謝りながらお風呂に入る事にした。
ーーーーー…。
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