あれから1週間が経ち、手紙の事は頭から離れないが何も起こらず仗助君達と一緒に居るのも少し慣れてきていた。
仗助君も固まらず挨拶を返してくれるようになったし私自身も心地よいと感じるようになったが、未だに由花子が言っていた気持ちは分からない。
そんな今日は日曜日。学校が休みの日だ。
家に居ても余計な事を考えてしまうと思い外へ出かける事にしたのだが…
「うーん…」
私は見つけてしまった。靴屋のショーウィンドウをまじまじ見つめて唸っている仗助君を。
私服の仗助君はいつもと違く、少しだけ大人びて見えた。それに比べて今日は少し出歩くだけだからと思いカジュアルな服装をしている私は仗助君凄いなぁ、なんて思いながら彼を見ていた。
声をかけようか…でも多分彼は物凄く悩んでる最中なのだろう。眉間にしわを寄せて唸っているぐらいに。そんな彼があまりに微笑ましくて邪魔になってしまうのも嫌で、私は通り過ぎようとしたのだが…
「あ、ミヤさん!」
即座にバレた。彼はまるで戦場から帰ってきた飼い主に駆け寄るように走ってきた。
「昨日ぶりね、仗助君」
「き、奇遇っスね!なんか買い物っスか?」
「仗助君は?ショーウィンドウを真剣に見てたみたいだけど」
「あー…見られてたんスか」
罰が悪そうにしながら欲しい靴があるが貯金がギリギリらしく買うか迷っていたと教えてくれた。
仗助君は普段から身だしなみをとても気おつけているらしく、バッチリ決まっている髪型もそうだが、普段からポケットティッシュやハンカチ、絆創膏やクシなどをちゃんと持ち歩いている。
そんな彼を知っているからこそ、さっきの光景を見た私は彼を可愛いと思えてしまったのだろう。
「今から暇っスか?」
「え?」
彼は「良かったら一緒にお茶でも行きましょうよ」と私に言ってくれた。靴を悩んでいたのに大丈夫なのだろうか…と思いながらも行くところも決まっていなかった私はあまり深く考えずに了承して違くの小さなカフェに入った。
店員さんが注文を取りにくると仗助君はカフェオレを頼み、私はコーヒーを頼んだ。
「なんか大人っスね…」
「そう?大人って言っても仗助君達とは1つしか違わないし、同級生じゃない。」
私はそう言うとずっと疑問に思っていた事を口にした。
「仗助君って何で私にはみんなと違う喋り方なの?」
「喋り方?」
「そう。〜っスとか敬語使ったり…同級生なんだから普通に喋りたいの」
「あ〜…」
仗助君は気まずそうにしながら「ミヤさんに説明すると恥ずかしいんスけど…」と言って頬を掻きながら話してくれた。
「俺、中学1年のころからミヤさんの事知ってたっつーか見てたっつーか…ミヤさんは覚えてないと思うんスけど、最初は入学式に男に絡まれて困ってる女の子達を助けたのを見て最初はすげえ先輩だなって思ってたんス。その後も見かけるたびに目で追ってて…俺の中でミヤさんはずっと憧れてる…その、好きな先輩なんスよ。だから同級生だとしてもまだ…その、学校にいるうちはまだ話し方変えられない…です。」
説明してくれた仗助君は顔を真っ赤にしながら俯いた。そんな彼の話を聞き私は驚いていた。
仗助君は私が知らない間も私を見てくれていて、ちゃんと本気で向かい合ってくれている。そんな彼に私は隠し事をしている…もちろん由花子にも話していない秘密。そう考えると胸が痛んだ。
「あ、ありが」
「お待たせいたしました。」
言葉を遮るように店員さんが注文したものを運んできた。私は安心した。
彼の気持ちに応えられないのに私は何故仗助君についてきてしまったんだろう。そう考えながらきたコーヒーを飲む。そんな私を見た仗助君は慌てながら口を開く。
「あー、でもそんな深く考えないでほしいんスよ?困らせたくて言ったわけじゃあないんで。ただ、その…仗助君の思い出話として聞いてもらいたいなー…なんて…ハ、ハハ」
目を泳がせながらそう言う彼が、どこか可愛らしく思えて自然と微笑みながら感謝をしていた。
「仗助君ありがとう」
「あ!」
「?」
「その笑顔、俺初めて見ました…やっぱミヤさんは笑顔が1番っス!」
目をキラキラさせながら「よっしゃ!」と喜ぶ仗助君にまた自然と微笑んだ。
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