私は夢を見ていた。それはいつもの光景。
由花子と広瀬康一がイチャイチャと由花子が作ったお弁当を食べていて、私や仗助君や億泰君はたわいもない話をしながらお弁当やパンをそれぞれ食べている。

ふとした時に仗助君と目が合うと仗助君は少し頬を赤らめながら目線をそらす。その光景を見ていた億泰君は涙目で少し怒っていて、仗助君がなだめる。私はそんな2人を見て微笑ましく思っていて、由花子が言っていた幸せな時間というものが少し分かった気がした。

そんな小さな幸せの中…黒い霧が私達を包み込み、その霧はだんだん濃くなり真っ暗になった。私は声をかけながら手探りで皆を探すがどこにも居ない。私は皆の名前を呼び続けた。





「ミヤさん!」

「ーー…あ…」



自分の名前を呼ばれ目を覚ますと、心配そうに私の顔を覗き込んでいる2人が居た。

仗助君と億泰君だった。



「起きてくれて良かったっス」

「ミヤが起きなくてよォ、心配したんだぜ?」

「ここは…」



周りを見渡すとそこは私の家の近くにある公園だった。あれは夢じゃなかった…誰も近寄らず騒いでいる中で仗助君達は私の一言を聞いてくれていたんだ。

そして「逃げて」と言わずに「連れ出して」と言ったのは正解だったのかもしれない。きっと仗助君達は「逃げて」と言ったら誰かに私がやられたと思って立ち向かってしまう。

まだ仗助君達とは短い付き合いだけれど、正義感のある人達というのは分かっていた。



「あれ?」



私はふと気づく。
身体が痛くない。痛くないというか怪我を全くしていなかった。階段から転げ落ちて身体中痛くて気絶したはず…身体を色んな所へぶつけながら落ちてしまったから多分足は折れていたと思う。頬から血がドロっとしたへ垂れていたのも感覚で分かった。

でも今の私は無傷だった。痛みがある場所もなければ擦り傷さえ無い。制服も汚れていない。



「私階段から落ちて怪我をした気がするのだけど…」

「ん?あー、あれっスよ!階段から落ちたのが衝撃的すぎてそう勘違いしたんじゃないっスか?」

「そう…だったのかな…?」

「そうだぜェ、びっくりするとよォ〜勘違いするもんだよなァ〜」



2人は力強く頷きながら不自然な笑顔をしている。納得は出来ない…だけど今はそんな事を議論している時間がない。

私は険しい顔をしていたのか気づいた仗助君は真剣な表情で私に尋ねる。



「なんかあったんスか?昼休みに入ってミヤさんが今日は屋上ダメだから先に食べといて…なんて言ってたからスゲー気になってたんスけど。しかもその後、階段で倒れてるミヤさん見つけて…誰かにやられたなら俺はソイツを許さねえ」



そう言っている仗助君の表情はいつもの優しい表情とは違っていて、痛いだろうと思うくらい拳を強く握っていた。

私は考える。

すでに巻き込んでしまったからには説明をしなければならない。今日の出来事はもちろんだけれど、もしも桐島奏太が奴の言っていたプレゼントの1個目なら私を殺すために次々とくるかもしれない。そうなら私が幼い時の話も少ししなければならない。そしてあの子の話も…

そんな事を考えていると億泰君が口を開く。



「ん?あの中坊こっち見てっけどよォ〜知り合いか?」



背筋が凍るような感覚が起きる。
億泰君の言葉に私の心臓は早くなり、冷や汗が出てきた。ゆっくりと振り向くと



「先輩…探しましたよ」



桐島奏太が笑みを浮かべながら立っていた。




ーーー。

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