BOOST!
「たんまり儲かったな」
「うん…すごいや…」
食物から薬草といった消耗品を買い込んでなお、ゴールドを入れている袋はずっしりと重みがある。こんなにお金を手にしたことはないので少し怖くなるぐらいだ。自分のものだけではない大切な共有財産、落としたりしないように気をつけねば。
仲間が増えレシピも増え、より一層鍛冶に励むようになった結果、どうぐぶくろの中がパンパンになるほど装備品が出来上がった。身につけられるものはいいが、もう使わないものは荷物になるだけである。しかしまだ大きな町までは距離があるので、通りかかった旅商人に買い取ってもらうことにしたのだった。相場というものがわからないイレブンは商人の言い値で売ろうとしたが、そこで慌ててストップをかけたのはカミュだった。
「おいおい、そいつはそんな値じゃないだろ。倍はもらうぜ」
「…そんな、お客さんそれはさすがに…」
「か、カミュ、倍は言い過ぎじゃない…?」
「お前がビビってどうするんだよイレブン…。ま、別に、この先の町でならもっと高く買ってくれるやつがいるかもな」
どうする? と煽るような視線がイレブンに向けられたが、実際にカミュが揺さぶっているのは商人の方だろう。ぐぬぬと考えた商人が、言い分を呑むのにそう時間はかからなかった。
「もっとふっかけてもよかったんじゃないか? お前が作ったものは店で売ってるもんよりずっと出来がイイんだからさ」
「う、うーん…さすがにあれ以上は申し訳ないよ…」
何せ更に攻撃力や防御力が高いものを作り出しているので、それらより弱いものを高く売りつけるのは良心が痛む。旅を続けるのにお金が必要なことも、お金儲けが悪いことではないこともわかってはいても、物の売り買いすらろくにしたことなかった田舎育ちのイレブンには、まだまだ慣れないことだ。
「…謙虚だな、勇者さまは」
ため息をつきつつもお前らしいけどな、というカミュは、そんなイレブンを責める気は一切ないようで、このひとはとことん自分に甘い。甘えてばかりいたくないけれど、こんなときはつくづく世慣れたカミュの頼もしさを感じるイレブンだ。彼の元相棒であるところのデクは商才があったと言っていたけれど、彼にだってあるんじゃないかとひそかに思う。
「ま、いい肉も買えたしあいつらも喜ぶだろうな」
「そうだね…カミュのおかげだよ。ありがとう」
「…オレじゃなくてお前が作ったもののおかげだろ?」
もっと自信を持てよ、なんて、こっちのセリフなんだけどなあ。
通販でBOOSTされたのが嬉しくて感謝の気持ちを込めて書きました…
ありがとうありがとう…
190109
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