胸に残る一番星 | ナノ

  共闘のススメ


 昨夜のことだ。大きなフードを被った青年が、ぐったりとした男を背負って突如この教会へとやってきた。

「…アンタ、この教会の者か? 休める場所があるなら借りたいんだが」

 驚くひまもなく低い声を投げかけられる。魔物にでもやられたのだろうかと思ったが、パッと見てどちらにも目立った怪我はなく、血も流していなかった。怪しさはあるものの、青年が警戒心を露わにしながらもどこか縋るようであったので、率直に答えることにした。自分はただの旅人だということ。中にはシスターが一人いること。言えば恐らく貸してくれるだろうということ。

 聞き終えた青年は「そうか」とだけ言って足早に教会へと向かっていった。しかし扉の前でぴたりとその足を止める。青年の両腕は男を背負っていることで使えないのだ、とハッと気づいて扉を開けに行った。

「…助かった。礼を言うぜ」

 近くで見ると青年はそれほど大きくなかったし、背負われている者の方が背が高そうだった。兄弟だろうか。運ぶ手伝いを申し出たらすげなく断られてしまった。
 曰く、
「こいつは簡単に任せられないもんなんでな」
 …と。
 フードから覗く口元は、笑っているように感じられた。それはまるで、とびきりのお宝を見つけてきたような――。
 気にはなったが、シスターに通された奥の部屋へとひきこもった彼らに事情を聞き出すことはかなわず、まあいいかと自分も眠ることにした。


「あの、すみません。昨夜はお世話になったみたいで…」

 昨夜と同じ木のそばで佇みながらここの丘の風景を眺めていると、フードを被った見知らぬ男に声をかけられた。どこかで見た紫色の服装、…ああ、昨夜あの青年に背負われていた子か。改めて見ると顔立ちは幼く、少年のようだった。別に世話というほどのことはしていないよ、と笑って返す。

「でもカミュが、あなたにも礼を言っとけって言ってたので…。僕は気を失ってたみたいだから詳しくはわからないですけど、ありがとうございました」

 お礼とともに頭を下げられて驚いた。本当に大したことはしておらず、お節介だったかと思っていたのに。ずいぶんと律儀な子たちだ、と何だかおかしくなってしまった。
 
「お前と一緒にいる青い髪の男はカミュというんだな。お前たちはいいパートナーになりそうだ」



180913

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