胸に残る一番星 | ナノ

  どんなかたちでも


 ベロニカとセーニャは一目見ただけでも勇者だとわかった、という。カミュやシルビアはただならぬものを感じたから共に行動を始めた、という。何とも運命的だ。

 自分はというと、あの手のアザを見るまでは……見てからも、しばらくは確証を持てずにいたのだから、少し恥ずかしいような、悔しいような。

 そんなことをマルティナがこっそりぼやくと、ほっほとロウが笑った。

「ワシらとイレブンのはじめての出会いは、もっとずっと前になるじゃろう」

 ……そうだった。エレノアに抱かれた、小さな赤ん坊。弟同然にかわいくて愛おしいそのいのちを、守りたいと思ったのだ。勇者だなんて知らなかった頃から、16年経った今も変わらずに。いや、今度こそ、となお強く思いは増している。

 しかしイレブンとの再会を喜べども、あの日の哀しみと悔恨を思い出してしまい、どうしても切なさが残る。そこが彼らとマルティナでは決定的に違うように感じられて、また。

 そんな複雑な気持ちを読み取ったかのように、ロウが優しく呼びかける。

「姫よ」
「……はい」
「ワシはどのような形でも、あの子と生きて再会出来て、本当に嬉しかった」
「……それは……私もです」
「つらい別れがあれば、嬉しい出会いもあるのが人生じゃ。……生きてさえいればな」
「ロウさま……」

 そのことばの重さときたら、彼と十数年共にしたマルティナでさえ胸が潰れそうになる。それでもロウはひげを揺らして笑うのだ。

「イレブンも、集った者たちもみんないい子じゃ。未来はきっと明るいぞ」
 
 染み入るような優しい声に、泣きそうになるのを堪えながら、頷く。

 本当に強い人だ。自分ももっと強くなりたい。そうしてイレブンもロウも、いつか帰るべき故郷や父親のことも、大切なものすべて守りたい。

 果たしてこの道が運命かはわからずとも、この想いだけは確かなものとして抱えながら、進んでいこう。




お題『運命の出会い』
○○を使わない140字小説お題
210715

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