胸に残る一番星 | ナノ

  treasure or dead


 どうしても行くっていうのか、相棒。
 そう聞けば静かに頷かれた。その意思を宿した瞳はこの混沌とした世界でより輝いて見える。

「それならオレは何も言えねえよ、お前が思うままにやってみな」
「ありがとう、カミュ……!」

 そうしてイレブンは背を向けた。


「……って、何絆されてんのよカミュー! あんたが止めないでどうするの!」
「いやだってよお、ロマンはわかるしな……」
「何がロマンよ、こんなでっかい宝箱、どう見たってワナじゃない!」
「えいっ。………………あ」
「……って、ほらやっぱりー!」

 道の外れで見つけた何やら大きな宝箱。「「「どう考えても怪しい」」」という皆の制止を、「だってもしかしたらものすごいお宝があるかもしれない!」と好奇心の塊たる勇者は振り切って、開けてしまった。

 途端、ギョロリと大きな目と舌が宝箱の中から現れる。案の定、モンスターだった。言わんこっちゃない、とベロニカや他の仲間たちが頭を抱えながら臨戦態勢に入る。

 カミュだって正直予想はしていたけれど、だからってお宝を追い求めるロマン、それもイレブンがやりたいと思うことを止められるはずもないのだから仕方ない。

「ご、ごめんみんな〜!」
「ああもう! 行くわよカミュ!」
「おう」

 しかし何やかんやこういうとき、率先して前へ出る彼女だって自分と似たようなものじゃないか、と思ったりもする。



お題『いちかばちか』
○○を使わない140字小説お題
210714

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