胸に残る一番星 | ナノ

  Oh, No!


「斧が……オゥノォ……」
「ダメダメ、もっと情感を込めて!」

 何やら苦しげな表情を浮かべるグレイグにダメ出しをするシルビア。さながら剣の修行をしているときみたいだが、言っていることはどうもおかしい。

「……何やってんだ、あのおっさんたち」

 用を足してキャンプ地へ戻ればこれで、突っ込まずにはいられない。

「あ、おかえりカミュ。何かね、雑なギャグで人を笑わせようとするなんて甘いのよ! ってシルビアが言い出してグレイグを鍛えてるとこ」
「何だそりゃ……」

 すっと相棒が説明してくれた。光景があほなら理由もあほくさかった。ヒマだからって他にすることがもっとあるだろう。

「僕はグレイグのギャグ、けっこう笑っちゃうけどなあ」
「あー……突然言い出すもんな、あのおっさん」

 イレブンに控えめな同意をする。カミュにはちっぽけながら矜持があるので、グレイグのしょうもないギャグに笑ったりはしない、が実は噴き出してしまいそうになることが多々ある。せっかく我慢しててもイレブンがおかしそうに笑い出せば、つられてしまうこともある。だってあのお堅い将軍サマが、突拍子もなくくだらないことを言うんだからズルいのだ。

「ね、勢いに押されちゃう」
「不意打ちなんだよなー」
「……今のあんたたちのセリフ聞いたら、シルビアさん泣いちゃうわね」

 傍から見ていたベロニカが、今日も小さくため息をついた。



お題『寒い』
○○を使わない140字小説お題
210707

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