「凄いよなー!あのニンバス2000だぜ!」
「ロン、もうちょっと小さく喋ってよ」
マクゴナガル先生からもらったニンバス2000を寮のベットの下に置きにいった。ロンはずっと箒の話をしていた。僕だってもちろん嬉しいけどね。
2人で歩いていると中庭の方から「上がれ!」と透き通った声が聞こえてきた。ロンと顔を見合わせて中庭を見ると、汽車で会ったミーリックがいた。
「確か飛べないんだっけ」
「他は優秀みたいだけどな、どこかの誰かさんにそっくりだ。前の合同の飛行訓練の時、君とマルフォイが争ってるとき一人飛ぶ練習してたんだぜ?どういう神経だよ…」
ロンが言うどこかの誰かさんはすぐに誰かわかった。けどミーリックはハーマイオニーとは何だか違う。ハーマイオニーよりも冷たい感じで誰とも関わりたくないみたいで。
「コソコソするなら出てきたら?気が散るわ」
ミーリックに言われて僕たちは物陰から出た。するとどっか行けと言うかのように睨まれた。
「…手伝うよ」
「「は?」」
僕がそう言うとロンとミーリックは声を合わせて驚いた。
「汽車で助けて貰った貸しがあるからね」
「何言ってんだよハリー、スリザリンと関わるなよ」
ロンが小声で言った。汽車ではかっこよかったなって言ってたのに組分け帽子がスリザリンと決めてから態度が随分変わった。
「君にとっても損じゃないと思うよ」
「…シーカーになったからって随分気取ってるのね」
何故知っているのかと問い詰めようとしたけどミーリックなら別に言いふらしたりはしないだろう。はっきり言えば言いふらす人もいないだろう。
「いいわ、教えて貰おうじゃないの」
教えれるものなら教えてみなさいよ、と言うかのようにミーリックは口角を上げた。
「ミーリック、飛行が怖いの?」
何分か飛ぶ練習をして、箒に跨がるミーリックに思ったことを言った。やっぱり癇に触ったようで睨みながら舌打ちされた。
ロンがなんてこと言ってるんだよ慌てだした。
「ポッター、貴方何様なのかしら」
「正直に言ってよ、このままじゃずっと飛べないよ。別に恥ずかしがることないさ。」
「…別に怖いとかじゃなくて少しトラウマなだけよ」
「やっぱり怖いんじゃないか…」
ミーリックはロンの小言を聞き逃さず、睨み付けるとロンはすぐにそっぽ向いた。
「怖がらなくて大丈夫、ミーリックなら出来るよ」
「ロングボトムを見て怖がらなくて大丈夫なんて通じるわけないでしょう…」
「ミーリックが失敗する姿なんて想像出来ないよ」
その言葉が嬉しかったのか、ミーリックの口元が少し緩んだ。ロンがあんなこと言ってたから冷たいのかと思ってたけどそうでもないみたいだ。
ミーリックは箒を握り締め、空を見上げた。地面を蹴るとミーリックの足は再び地面につくことなく、浮いた。飛んだ。
「!!!」
「飛んでるよ!飛んでるよミーリック!!」
唖然としていたミーリックは僕らを見下ろして威張るような表情を見せた。僕には、微笑んでるようにも見えた。
「感謝はしてないけど礼は言っとくわ」
「何だよそれ!ちゃんとハリーに感謝しろよな!」
「役に立てたのなら良かったよ」
「……随分とお人好しね。度が過ぎて惨事に巻き込まれないことを願うわ。」
ミーリックは長い髪を揺らし、箒を持って背を向けた。
ロンがどこ行くんだよ!と怒鳴ればフーチ先生に飛べるようになりましたって箒を返さないとと返した。その後、小さな声で感謝するわと言ったのを僕とロンはちゃんと聞き取った。