「う…」
汽車内で魔法薬調合法の教科書を読んでいたが閉じた。車内で本は読むものじゃないわ。気持ち悪い。
昼に来た車内販売で買った百味ビーンズでは胡椒味に草味、芽キャベツ、レバー味とちゃんとした味が全然出なかったし今日は運が悪いわ。かぼちゃパイにしといたら良かったわ。
「聞いたか?汽車内にハリー・ポッターが居るらしいぞ」
「ハリー・ポッター!?」
コンパートメントを出ていた3人が帰ってきてドラコが発した人物に取り乱してしまった。しまった、何てみっともない…。
「ヒルダも興味があるのか?一緒に見に行こうじゃないか」
「別に興味なんかないわよ。私、まだ制服に着替えていなかったしちょうどいいわ、数分帰ってこないで」
私がそう吐くとドラコは不満そうな表情をしてクラッブとゴイルを連れてまた出ていった。一刻も早くドラコとの馴れ合いをやめたい…自慢話ばかりしてくるんだもの。クラッブとゴイルに同情するわ。
興味がないと言ったものの、あのハリー・ポッターだ。誰もが知っている有名人だ。興味がないわけがない。
私は急いで制服に着替えてコンパートメントを出た。
汽車内を歩いていると別のコンパートメントに入り込んでいるドラコとクラッブとゴイルを見つけた。あそこにハリー・ポッターが…。
「ウィーズリー家やハグリットみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
「もう一ぺん言ってみろ!!」
何やら怒鳴り声が聞こえてきたからその場に駆けた。
「へえ、僕たちとやるつもりなのかい?」
「今すぐ出ていかないならね」
「出ていく気分じゃないな、君たちもそうだろう?僕たち、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはまだあるようだし」
ゴイルが彼たちのカエルチョコレートに手を出そうとした時、近くに来た私にドラコ達は気づいた。
「名家の息子がはしたないわね。お菓子なら私の百味ビーンズあげるわよ。」
私が呆れたように言うと、ドラコが舌打ちをして3人は私を退けてコンパートメントに戻っていった。
「…君はマルフォイの知り合いかい?」
「はあ!?冗談じゃないわ!あんな礼儀のなってない名前だけの坊っちゃんと同じにされたくないわ!」
途中でハッと我に帰った。ハリー・ポッターに問われて思わず大声で言ってしましった。ああ…みっともないわ…。
話を反らしてこちらから問うことにした。
「あ、貴方があのハリー・ポッター…?」
「そうだよ、こっちはロン」
丸メガネにくしゃくしゃな黒髪のハリー・ポッターは答えた。この子が…少しイメージと違ったわ。
「ロナルド・ビリウス・ウィーズリー、ロンでいいよ。さっきはありがとう。」
ハリー・ポッターと一緒に居た赤毛でそばかすだらけの子がそう言って来た。感謝されるのは悪くない。けどこれは仲良くなってしまうシュチエーションだ。ここは引かなくては。
「どういたしまして、一目見れただけでも良かったわ。それじゃあ。」
私はその場を去り、コンパートメントに戻った。
コンパートメントでは不機嫌なドラコと百味ビーンズを貪り食うクラッブとゴイルが居た。私を嫌ったのは好都合だけどホグワーツに着くまでずっと一緒なのは気が引けるわね。
私はため息をついて座った。早くホグワーツについてほしい。