ガコガコ、
耳障りなトランクを引きずる音
ガヤガヤ、
耳障りな人々の騒ぎ声
誰よりも先に汽車に乗った私はそんな音にずっと苛立ちを覚えていた。
ホームでは家族に別れを告げる自分と同い年の子供ばかりが居た。発車準備になると悲しそうに子供は汽車へ乗っていく。
私はそんな様子に舌打ちをした。
少しでも期待した私が馬鹿だった。あの人達が見送りに来てくれる訳がないに決まってる。まだ少しでも期待がある自分に腹が立つ。
今日、私はホグワーツ魔法魔術学校に入学する。両親もホグワーツの卒業生で二人はレイブンクロー生だった。
レイブンクロー生なだけあり、二人はプライドが高く、偉そうで人を見下す私が気に入らないといつも言う。それはあの人達も同じだろう。よくお互い結婚できたものだ。
そんな気に入らない娘がスリザリンに希望している。認めるわけがないだろう。
自分らがレイブンクローだから娘もレイブンクローにさせたいようだ。確かに私はレイブンクローにぴったりかもしれないが、あの人達に従うのは絶対に嫌だ。
グリフィンドールやハッフルパフなどいい子な寮は尚更嫌だ。
ならスリザリンだ。
私はそう考えついたのだ。
「グリフィンドールは勇猛果敢、ハッフルパフは心優しい…反吐が出る」
そう吐き捨てた途端、コンパートメントのドアがノックされた。
振り向くとそこにはプラチナブロンドの少年と大柄な少年2人が居た。
「席、座らせてもらうぞ」
ブロンドの少年はそう言ってドアを開けて入ってきた。
座ってもよいかではなく座らせてもらうぞ。なんとも性格が出ている違いだ。
4人は座れる席に自分1人しか座っていなかったので断る理由もなかった。贅沢を言えば1人が良かったが。
ブロンドの少年は自分の前に乱暴に座り、その隣に大柄な少年の1人が座った。気づけば自分の隣にも大柄な少年が。
「お前、名前は」
「レディに先に名乗らせるなんてなってないジェントルマンね」
口角を上げて嫌味ったらしく言えば、思った通りに彼は苛立った。
「…ドラコ・マルフォイだ。有名なマルフォイ家の息子だ。」
有名なと言われたが彼自身が有名なわけではないのだから何故威張る。
「ドラコで良いかしら」
「特別に構わないぞ」
「…ヒルデガード・ミーリックよ。ヒルダでいいわ。宜しくするつもりはないから宜しくは言わないわ。」
「減らず口だな、君は」
「貴方に言われたくないわ」
鼻で笑えば「君とは気が合いそうだ」とドラコは言った。私もその気がするけど馴れ合うつもりはさらさらない。
「そういや君は純血かい?」
「…そうだけども。父親に似て純血主義者なのね。」
「まあね。こっちはビセント・クラッブとヒルダの隣がグレゴリー・ゴイルだ」
「クラッブとゴイルで良い?」
私が聞くと2人は頷いた。
いつの間にか2人は荷物の中から袋にたくさんはいった小さめのカップケーキを食べていた。その食べ方が汚ならしくて見ていると腹の虫がぐうぅと鳴いた。
…私の。
腹の虫が鳴いたことで3人は私を見つめた。
「…そんな目で見ないでよ!朝から何も食べてないのよ!」
「君の家は貧相なのか」
「そういうわけじゃないのよ!当日になってもあの人達が認めないから…」
偉そうに言うドラコに腹が立っていると、ゴイルが私の目の前にカップケーキを差し出して来た。
「お腹空いてるんだろう?」
首を傾げて聞いてきたゴイルに私は今すぐカップケーキを手に取りたかったが、私のプライドが許さない。人に頼ることになるだなんて。ホグワーツまでは遠いのだから何か持ってくるべきだった。
いや、私じゃなくてあの人達のせいだと心の中で暗示をかけてカップケーキを手に取った。
「ありがとうゴイル、感謝するわ」
「どういたしまして」
貰ったカップケーキを口にし、窓から景色を見つめた。
あの人達が認めるような魔女になって見返してやるんだから。