Your sight, my delight.
ミコトはずっと気にくわなかった。
第一小隊は先日、校内一の強さを誇るバイオレットデビルの名を持つガウンタイゼルファーとの戦いで囮に失敗した。その為第一小隊のLBXはかなり負傷した。
そして翌日になると第一小隊は新しいLBXが支給されたことに。

「不公平です…」

自分のDCエリアルを少し改良したいが、コウタはアキトとシンのDCエリアルのメンテナンスで精一杯なのだ。彼らはリクヤを守っているから。

「もう少し重構造を厚くして、ゲンドウさんのDCエリアルように速く動けるようにするには…」

小声を呟いていると隣の席のアキトが「瀬名アラタに似てきたんじゃないか」と嘲笑して来た。ミコトは腹が立ったが怒りを押さえて無視した。
次の時間は体育でマラソンだということを思い出して更に不機嫌になった。
そこでまた思い出した。次の時間は、貴重でもある体育だ。無視してたはずのアキトに話しかけるのはプライドが許さないが愛する彼の為ならばプライドだって捨てれる。それが恋だ。

「アキトさん、四時限目の体育、男子は体育館で何をするんですか?」
「…バレーだ。」
「アキトさん出来るんですかその小ささで…」
「奥ミコト!!失礼にも程があるぞ!!」

身長の事を言うと思った通りにアキト怒鳴り出して、教師に注意された。ミコトは内心でざまぁみろと呟いた。
バレーと聞いてミコトはファイちゃんをぎゅっと握りながら、笑みをこぼした。



床が靴と擦れる音、動きまわる生徒の足音、スパイクが決まり、ボールが床に打ち付けられる音。
体育館からはたくさんの音が響き、ミコトはその音を体育館裏から聞いていた。

「カイトさん発見!よし、出来るだけ近くの方に回りますか…」

お目当てのカイトを見つけて相棒であるファイちゃんを構えながら場所を移動した。
撮るならスパイクを打つ時が良いなと考える。第五小隊の相手は第二小隊だったのでカイトはゲンドウ勝とうと何度もスパイクを打つだろうからチャンスは何度でもあると判断した。

体操服は素晴らしい物だ。男子生徒は夏でも制服は長ズボンという過酷なことがあるので、暑い時は男子生徒の助けでもある。いつも長ズボンだからこそ半袖ハーフパンツだと滅多に見れない足が見れるのは格別なのだ。
タダシからのトスを受け、カイトがスパイクを打とうとしたところでシャッターを押した。ちゃんと撮れただろうか、ミコトは現像が楽しみだった。

「ミコト、居た…!」
「…ユ、ユノさん。」

いつの間にか真後ろで禍々しいオーラを放ちながらユノが仁王立ちしていた。ミコトは苦笑するしかなかった。

「点呼取ったらミコトだけ居ないんだもん…!ここにいると思った!!」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!!まだカイトさんを1枚しか撮れてません!!」
「毎日撮ってるくせによく言うよ!!」
「体操服姿は別です!!バレーですよ!あわよくば腹チラだってあるかもですよ!!うふふ…カイトさんの腹チラ…」
「もう良いから!行くよ!!」
「ちょ!マラソンは嫌ですー!」

ユノに首根っこを掴まれ、引っ張るように運動場へ向かって連れていかれてしまった。
さっきの1枚に懸けるしかないとミコトは項垂れた…。

「騒がしいな…またアイツか?」
「だろうね。」


体育の授業が終わって教室に戻るとカイトに呼ばれた。ミコトは用件を聞く前に呼ばれたことで昇天出来るんじゃないかという状態だった。
カイトの席の横に立つと、カイトも椅子を横に座って足を出して組んだ。
ミコトは今から何を言われるのかと尻尾を振っているかの状態だった。

「あのね、僕が素敵だからって撮るのは全然構わないけどさ、君はプライバシーとか考えたことないの?」
「学校生活はプライバシーに関わりますかね!?それなら行事の時に写真を撮る教師はプライバシーの侵害です!!」

自分にしては正論を言えたんじゃないかと少し自慢気になった。カイトのプライベートの写真はまだ少ないのだ。言い返されることは無いと思う。これからプライベートの写真は増やしたい。

「わかった、学校でのは許すよ。だから毎朝寮の裏に回ってきたり共同風呂の窓に張り付いてるのやめてよね。」

しまった、バレていたか。だけどまだどれも成功していない。
朝はタダシに邪魔されるし共同風呂の窓は曇っているから。カイトが言うならやめたいが、成功していないのにやめるわけにはいかない。笑って誤魔化してみせた。

「…ったく…ほら」

カイトはミコトに向かって自分のCCMを放り投げて来て、反射的に受け取った。CCMを見て、##NAME4#は自然と表情が明るくなった。

「もしかして長年教えて下さらなかったCCMのアドレスを教えて下さるんですか…!?」
「長年ってそんなに長くないし。というか教えないから。ちゃんとロックしてるし。」

ミコトが残念そうに体を竦めながらため息をついた。実を言えばロックを解くまで何度も試す根気は十分にあるのだが。カイトは足を組み直して発した。

「何か飲み物買ってきてよ。そしたら今の機嫌は直るから。」

ミコトは驚いたように呆然としていると、やっと言葉の意味がわかったのか、嬉しくて堪らなくてニヤけてしまった。分かっていたが隠す余裕も無かった。

「はい!!」

元気よく返事をするとすぐに教室を出て行った。

「何パシらせてるのよ」

先程の様子を見ていた第四小隊隊長のキャサリンがカイトを睨み付けながら言った。

「いいじゃないか、喜んでるみたいだし。案外僕の下僕として使えるかもね。」
「アンタやっぱり最低だわ…レディには優しくするものよ!ジェントルマンよジェントルマン!」
「これが僕の優しさだよ」

カイトは鼻で笑った後、頬杖をついた。


任されたことも嬉しかったが、カイトが自分のCCMを渡したことが一番嬉しかった。自分のシルバークレジットで買えということなんだ。
そんな彼の不器用な優しさを言いふらしたいぐらいだったがそれはやめた。

「皆さんまでカイトさんを好きになっちゃうじゃないですかっ!」

彼の不器用な優しさを知っているのは自分だけでいたい。独り占めしたい。
このことは誰にも秘密だ。

「ミコは今日、更に貴方が好きになりました。カイトさん。」

カイトのCCMを握りしめながら、そう呟いた。


Your sight, my delight.
(あなたの存在そのものが私の喜び)


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ロックしたままお金使えるのか謎ですがね!!!!!


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