stalk everybody's friend

夕食の時間になると、ミコトは同室のハーネス第二小隊に所属する原澤サワネと食堂に向かった。
同じ第二小隊の者が自分の分も貰って来てくれていたようでミコトとサワネは別れた。

「あんな仲良さそうにして珍しいな」

お盆を持って並んでいると同じジェノック第三小隊メカニックの朝比奈コウタがミコトの隣に並んできた。先程サワネと話していた時の事を言っているのだろう。

「あの人はいろいろと天然なのでハーネスの情報を入手できそうですから。天然すぎて質問の意味が分かってないとこにイライラします…。」

同盟を結んでいない限り仮想国の生徒同士の密会は良しとはされてない。これは戦争で、相手は敵なのだ。自国の情報が漏れたりするのは命取りなのだ。
そんな中、人数の不都合でジェノックとハーネスの生徒が同室でその生徒が自分なのだ。チャンスでしかない。

「やっぱりそのままだった。俺が間違ってた。」
「コウタさんとリクヤさん以外とは馴れ合うつもりはありませんから。」
「すぐいなくなるプレイヤーと仲良くするつもりはないって?」
「仲良くなった分、いなくなると感情的になってしまいますから。戦争にそんな感情はいりませんよ。」

ミコトは定食を貰うと第三小隊の席に向かった。いつもの社交的な笑顔を見せて席につく。
彼女の本当の姿を知っているのは第三小隊に生き続ける者だけ。アキトとシンにも見せ始めてるくせにさっきのセリフをよく言うものだと、コウタはそんなことを考えながら自分も席に向かった。

「ハーネスの者と関わるな!ジェノックの情報を漏らしてないだろうな!」
「ミコはアキトさんみたいにそんな大声で間抜けな事はしません」
「誰が間抜けだ!!」

ミコの皮肉にアキトが思った通りに突っかかるとリクヤが静かにして下さいと一言いった。アキトはすぐに仕方なく黙った。

「気色悪い仮面を外したと思ったらとんだ皮肉屋だったな、誰かとそっくりだ。」
「気色悪いってなんですか!それってカイトさんの事言ってるんですか!?ミコとカイトさんを一緒にするとかどういう頭をしてるんですか!」
「大声で間抜けな事はしないんじゃなかったのか?」
「いい加減にしろ」

シンがアキトを宥め、コウタはミコの頭を軽く叩いた。二人は不満そうな顔をして口を尖らせた。
いただきます、第三小隊の皆はそう声を合わせると黙々と夕食を食べ始めた。
明らかにさっきの対応がおかしい。アキトは宥められただけだったのに自分は頭を叩かれた。しかも自分は女の子だ。
心の中でごちゃごちゃと愚痴りながらミコは箸を進めた。
別にアキトならいなくなっても嬉しいほうだ。
同じことを思っていたのか、睨むようにしていたアキトと目が合った。お互い同時にフンと顔を反らした。

「個人の話に首は突っ込みませんがウォータイムでもそのままはやめてくださいね」

いきなりリクヤが喋り、間が空いてしまい、アキトは驚いて慌てて返した。

「勿論です!リクヤさんをちゃんとお守りします!」
「ミコはリクヤさんをお守りする気持ちはこれっぽっちもありませんので」
「貴様…!」

自分以外のプレイヤーがリクヤを守る、その意味がわからなかった。自分を犠牲にしてリクヤを守ることには何の意味があるのか。補欠として入れられた第三小隊は謎ばかりで自分でも聞くタイミングを失っていた。話してもくれないし聞くべきではない謎なのかもしれない。

自分がリクヤを守らないことにはリクヤは少し嬉しそうにしている。約一年、少し遅れて入学した自分だがそれだけは分かっていた。
だから、ミコトはこれからもリクヤを守るつもりは一切ない。

「本当にピンチな時は助けるに決まってますよ。大事なリクヤさんですから。」

彼は誰よりも仲間を大切にしている。仲間殺しのリクヤなどと呼ばれているが全く正反対なのは自分とコウタが一番よく知っていると勝手に自慢げになった。

知らないことばかりのくせに、勝手に知った気になって満足している。自己満足だと分かっているが、リクヤが嬉しそうならそれでいいんだと言い聞かせた。

stalk everybody's friend
(ストーカー八方美人)


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