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「二人とも、剣を納めろ」
二人の剣劇の間に、張皖が割って入った。 張韻の剣を止めた短刀に皹が入る。
「どけっ、公徳! お前に代わって、私が志暉の仇を取ってやる」
張皖の脇腹に張韻の鋭い蹴りが入り、よろめいた。
「……それにお前には、これから国を背負って立ってもらわないといけないんだ。親殺しなんて罪、背負わせられるもんか」
脇を通り過ぎる張韻は、小さな声で張皖の耳にだけ届くように呟いた。 張皖からその表情は窺えない。
一閃、二閃と剣火が煌めいた、その刹那。張韻の剣が瑩の胴体を勢いよく貫く。 カッと目を見開いた瑩は、よろめきながら後退し、手にしていた凰蒼の剣を取り落とした。
「私の成そうとしていた事を……微塵も理解出来ぬ凡愚ども……必ず後悔する事になる……必ずだ!」
脇腹に突き刺さったままの剣を引き抜くと、床が赤く染まる。 ふらついた足取りで、瑩は真っ直ぐに玉座へと向かう。
「嗚呼、先帝よ。嗚呼、天帝よ。汝等の悲願を果たせずに逝く我を赦したまえ……」
終に倒れた瑩の腕は、遠く玉座には及ばなかった。
「さて……」
言いながら張韻が瑩の落とした剣を拾い上げる。その左肩には血が滲んでいた。
「私はお前の親父を殺した。言わば仇だ。そしてこの場に無断で立ち入った賊だ。公徳、私を殺せ」
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