chapter.2 eins
 ウンター・デン・リンデン駅を下り、その名と同じ、大きな通りをテレビ塔を背にして西へと歩く。

 あの夜、日付が変わる頃に帰宅したヒルデは、こっぴどく叔母に叱られた後、自身の希望もあり、そのままベルリンの自宅へと戻る事になった。
 長老は、剣の力を最大限に引き出す為の道具が必要になるとの話もした。
 道具を奪取し、剣と共に安全な場所へと保存する事が、当面の目標なのだそうだ。
 そして、道具はこのベルリンにある。
 持ち主はやはり、あのエルケンバルトと言う男なのだとも、長老は話していた。
 一番の問題は、如何やって道具を『譲ってもらうか』だ。

 パリザー広場で待ち合わせをしている。
 ウンター・デン・リンデン駅から広場までは200メートル余りで、その道則は程よく観光客で賑わっていた。
 パリザー広場は、彼の有名なブランデンブルク門のある広場で、さらにその西にはティーア・ガルテンの濃い森が広がっている。
 東西冷戦時、真っ先に壁がこのブランデンブルク門の前に打ち立てられた。
 今でも、壁の“向こう側”から覗くカドリーガをよく映像で見掛ける。
 長い間、分断の象徴だったこの門も、今やベルリン有数の観光名所の一つとなって久しい。

 待ち合わせの相手はヨハンとガブリエルの二人組。
 問題解決の手段もないまま、二人はこのベルリンへとやってくる。
 だが、ヒルデには一つだけ、難問打破への心当たりがあった。

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