数日後。
 その日は王子殿下こと、ジュード王太子の誕生日で、十六になったはずだ。
 上に兄が二人いたが、一番上の兄は夭折。真ん中の兄は体が弱いとの理由で王位継承権を自ら破棄している。
 リーは北向きの窓辺に立ち、ティーカップを手に外を見遣っていた。
 紅茶を一口啜った後、かちゃりと白いカップが皿に置かれる。
 窓の外は夕日が沈みつも、まだ黄昏の中に微睡む白き城の姿が見えた。
 だが、時期に銃声とともに炎に赤く染まっていく。

「さて、そろそろだな」

 リーは言いながらカップを机に置き、ゆったりとした足取りで部屋を横切った。

「誰か……誰かお出でか」

 屋敷の扉を叩く音に、すぐさまリーは反応して扉を開いた。

「何かお困りのようですな。どうしました」

「城に賊が……逃げ出してきたのだが、どうか匿ってもらえないだろうか」

 城からかなり距離があるが、ずっと走って来たのだろう。男の息が上がっている。

「貴方お一人でここまで?」

「いえ。連れが……」

 男は言葉を濁す。
 成る程、とリーは小さく首を振り、男を招き入れた。
 庭には隠し通路があり、城と繋がっている。
 この屋敷を買ったのは、その為だ。
 城が賊に襲われたと言うのは、ジュードが反乱を起こしたのだろう。
 その反乱から逃れて来たのであれば、王側の人間である。
 男が言葉を濁した様子からして、もう一人の王子が近くに居るのだろう。

「お連れの方は、今どこに?」

「すぐ近くの茂みで、私を待っています」

「では、私が迎えに参りましょう」

 リーは笑顔で屋敷を出た。

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