火花が、バチバチ(1)



 十二月の第二週目。例年の通り、スプラウトが、クリスマス休暇中に学校に居残る生徒の名前を調べにきた。



「君、こんな状況の学校にまで残る気かい?」



 リンが名前を書いたとき、アーニーが驚嘆して言った。どうかしてると言わんばかりの顔を、スイが尻尾でビシッと叩く。それを窘〔たしな〕めつつ、リンは肩を竦めた。



「家に帰って、母さんを邪魔して怒らせる方が危険だからね」


「では、リン、あの、僕の家へいらっしゃいませんか?」


「うちも大歓迎よ!」



 期待に満ちた眼差しで、ジャスティンが誘ってきた。ハンナも続く。なんとなく嫌な予感しか感じなかったリンは、当たり障りのない感じで、丁重に断っておいた。




**



「 ――― 諸君に、一つ忠告しておく」



 それから一週間後、ある日の魔法薬学の授業でのことだった。

 スネイプが、開口一番に低い声を出した。あまりにも迫力のある声音と眼光だったので、ハンナが「ヒッ」と小さく悲鳴を上げた。

 ごくりと生唾を呑んで恐怖の表情を浮かべる生徒たちを、スネイプは、ギラギラしている目で見渡した。



「我輩の授業を妨害することは、許さん」



 鼻の穴を膨らませながら言い、スネイプは、マントを翻して、地下牢教室の一番前にある自分の机へと戻った。かと思ったら、すぐに振り返って、生徒たちを睨んだ。



「必要な指示は黒板にある ――― 時間を無駄にするな」



 ボケッと突っ立ってないで、さっさと作業に取り掛かれ ――― 言外の命令を読み取り、生徒たちはワタワタと動き出した。ちなみに、今日の課題は「ふくれ薬」だ。



「……スネイプはいったいどうしたんだ?」



 いつも通り、リンの前の席を確保しているアーニーが、振り返って囁いた。リンは、真鍮製の秤を机の上に丁寧に置き、肩を竦めた。



「どこかのクラスで、授業を邪魔されたんだろ」


「スネイプの授業で? どこの誰よ、そんな勇者」



 後ろの机から、ベティが身を乗り出してきた。ニヤニヤして、実に楽しそうだ。



「知らない」



 べティを腕で押しやりながら、リンは、大鍋に水を入れる。ザバァーッと、豪快な音がした。



→ (2)


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