開かれた謎の部屋(1)



 ハロウィーンがやってきた。

 大広間は生きたコウモリで飾られ、ハグリッドが育てた巨大かぼちゃは、中身をくり抜かれ、中に大人三人が十分座れるほどの大きな提灯になっていた。


 いったい、どんな肥料をやったら、あんなに大きくなるのか。

 ベティの問いに、リンは、適当に「肥らせ魔法」じゃないかと返しておいた。コリンによる「トリック・オア・トリート攻撃」を避けるのに手一杯だったので、真面目に考える余裕がなかったのだ。




「……浮かない顔してるけど、どうしたの?」



 夕食時、リンが、黙々とレーズンを頬張るスイに声をかけた。彼女は、朝からずっと、何やら悩んでいるようだった。

 スイは、リンを見上げて口を開きかけたが、結局、何も言わず、静かに首を横に振った。



「……言いたいことだけ言ってくれれば、それでいいよ」



 リンは穏やかに微笑み、スイの頭を撫でる。その直後、ポンと、リンの頭に、誰かの手が乗った。



「トリック・オア・トリート、リン!」


「唐突ですね」


「友達になったばっかりのときは、些細な行事も見過ごせないぞ? まして、こんなおいしい行事なら、なおさら。というわけで、トリック・オア・トリート」



「一理ありますね。だけど、ミスター・ウォルターズ、食事の邪魔はしないでください」


「エドでいいって。つーか、リン、俺に気づいてたのか? 全然ビックリしてなかったけど」


「なんとなく、気配がしたので」


「へー。すごいな、リン。えらいなー」



 ぐしゃぐしゃと、リンの髪を掻き回し、エドガー・ウォルターズは楽しそうに笑う。リンは、無言で、彼の手を払いのけた。さらり、髪が首元にかかってくる。



「おぉー……サラサラだな、髪。羨ましいな。それよりトリック・オア・トリート」



 脈絡はどこに行ったんだろうか……。呆れながら、面倒さを感じながら、リンは、差し出されている手に、お菓子を乗せた。



「はいどうぞ。この特大ハッカキャンディーでも舐めててください」


「いや、これはいらねぇわ」



 真顔で言うエドガーを、リンは無視する。それにエドガーが文句を言おうとしたとき、また別の生徒がやってきた。



「エド、リンが困ってるよ」



 ぎゅっと眉を顰〔ひそ〕めて、セドリック・ディゴリーが注意をした。エドガーは、気に留めない風情で、再び、リンの髪を掻き回す。それを見て、スイの眉が、吊り上がった。


→ (2)


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