一年の終わり(3)



 ホグワーツに入学して一年が過ぎようとしていた。


 学年度末パーティーの会場である大広間は、スリザリンが七年連続で寮対抗杯を獲得した祝いとして、グリーンとシルバーのスリザリン・カラーで飾られていた。ハイテーブルの後ろの壁は、スリザリンのヘビを描いた巨大な横断幕で覆われている。


 みんな騒がしくおしゃべりに興じていたが、不意に、入口の方から静寂が広がった。


 相変わらず隣をキープしているジャスティンに受け答えをしていたリンは、広間の空気の変化に顔を上げたが、入ってきたハリー・ポッターを一瞥したあと、すぐに視線を外した。少し大きな活躍をした彼にとっては、たとえ一人だとしても自分を見る人が減った方が嬉しいだろう。


 ハリーのすぐあとにダンブルドアが現れて、広間は再び静かになった。ダンブルドアは各テーブルに向かって開会の挨拶をし、それから寮対抗杯の表彰を始めた。


「 ――― 点数は次のとおりじゃ。四位 グリフィンドール 三一二点。三位 ハッフルパフ 四〇七点。レイブンクローは四二六点。そしてスリザリン 四七二点」


 スリザリンのテーブルから、嵐のような歓声と足を踏み鳴らす音が上がった。しかし、ダンブルドアが、つい最近の出来事も勘定に入れなければならないという旨を告げると、シーンとなり、スリザリン生の笑いが少し消えた。


 ダンブルドアは(わざとらしい、とスイが思うような)咳払いをした。


「駆け込みの点をいくつか与えよう。まずは、ロナルド・ウィーズリーに……この何年か、ホグワーツで見ることができなかったような、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに ――― 五十点」


 グリフィンドールから、天井を吹き飛ばしかねないくらいの歓声が上がった。ダンブルドアは穏やかに彼らを見つめ、静かになってから再び口を開く。


「次に……ハーマイオニー・グレンジャーに……火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに ――― 五十点」


 グリフィンドールの寮生が、テーブルのあちこちで我を忘れて狂喜しているのが見えた。一気に一〇〇点も増えたのだから、当然だ。スイがヒョイと尻尾を振った。


「三番目は、ハリー・ポッター……」


 大広間が水を打ったように静まり返る。視線という視線が、ハリー・ポッターに向けられているのを感じ、リンは彼に同情した。


「その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに ――― 六十点」


 耳をつんざく大騒音だった。グリフィンドールは四七二点になった……スリザリンと全く同点だ。寮杯は引き分けのようだ。


「あと一点でも多く、ハリー・ポッターにあげてくれればよかったのに」


 ベティが残念そうに言った直後、ダンブルドアが手を上げた。広間の中が少しずつ静かになる。


「勇気にも色々ある」


 ダンブルドアは微笑んだ。


「敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ。そこで十点を ――― ネビル・ロングボトムに与えたい」


 グリフィンドールから歓声が爆発した。リンも思わず声を上げた。ネビルを見ると、驚いて青白くなっていたが、みんなに抱きつかれ、人に埋もれて見えなくなった。


 レイブンクローもハッフルパフも、スリザリンがトップから滑り落ちたことを祝って、喝采に加わっている。


 ハンナは嬉し泣きをしたし、ベティとスーザンは手を取り合って飛び跳ね、アーニーとジャスティンもハイタッチをしていた。


→ (4)


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