一年の終わり(4)



「……やったね、リン」


 肩の上で、珍しく声を潜めないまま、スイが言った。リンは笑顔で頷いた。


 教員テーブルへ視線を向けると、スネイプが苦々しい作り笑いでマクゴナガルと握手していた。


 手を解いたスネイプが戻った席の隣 ――― 椅子も置かれず、ぽっかり空いた空間を見て、何とも言えない空虚な気持ちが、リンの中に湧き起こる。


 リンは、何とか笑みを作って、その空間に向けて会釈した。


 目頭が熱いのは、きっと気のせい。そう自分に言い聞かせるリンの頬を、スイはそっと撫でる。何も言ってやれない自分が不甲斐ないと、スイは思った。


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 すっかり忘れていたが、試験の結果が発表された。ハンナもスーザンもよい成績だった。ベティは薬草学の成績が散々だったが、天文学が異常にできていて、何とかカバーできていた。


 みんなが一番驚いたのは、学年の一位と二位だった。二人揃って満点をかなり上回っていて、他の生徒たちは舌を巻いた。


 それでも、二位の人物は、一位の生徒に点数で大差をつけられて、大いに悔しがっていた。


「 ――― 見てなさいよ、リン・ヨシノ! 来年は絶対に抜いてやるんだから!」


 空に向かって叫ぶハーマイオニー・グレンジャーの背後で、彼女の友人であるハリー・ポッターとロン・ウィーズリーは肩を竦めた。


 どんな子なのか、まだよく分からないが、ハーマイオニーに(かなり一方的な)敵意を燃やされるなんて可哀想だ。


 一方、ハーマイオニーの渾身の叫びを耳にしたリンは、黙ったままスイを撫で、彼女に見つからないうちに去ろうと歩いていく。


 彼女のおかげで余計な注目を浴びてしまった……ハンナやアーニーは感嘆しているし、もはや、ジャスティン・フィンチ‐フレッチリーなんか言うまでもない。


 物憂げに溜め息をつくリンの頬を、スイはそっと撫でた。


**


「まあ、いろいろあったけど、楽しい一年だったよね?」


「……そうだね、スイ。来年は、何事もなく平穏無事だといいね」


「でもほら、何はともあれ夏休みだよ。楽しみじゃない?」


「そう? 楽しい休暇の前に、君を苦しめる時差ボケが君を待ってると思うけどね」


 ホグワーツ特急がロンドンに着く少し前に、リンは、スイに向けて、少しだけ意地悪い気持ちで微笑んだ。



第 1 章 完

次ページにあとがき。
いらない方は飛ばして 第 2 章 へ。



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