空を思い出す(1)



 あれから三日後の朝食の時間、ハグリッドがハッフルパフのテーブルにやってきた。すっかり体調が元に戻ったスイを連れている。スイはすぐにリンの肩へと飛び移って、彼女の頬に頭を寄せた。


「おかえりなさい」


「……ただいま」


 周りに聞こえないよう小さく返事をしたスイに、リンは嬉しそうに笑って、ハグリッドを見上げる。


「ありがとう、ハグリッド」


「んにゃ、礼には及ばん。そんじゃあ、またな」


 ポンとリンの肩を叩いて ――― その力が強くて、リンは椅子から落ちそうになった ――― ハグリッドは教員テーブルへ向かっていった。


 それを見送って、スイの頭を撫でるリンに、斜め向かいに座っていたスーザンが微笑んだ。


「スイが元気になってよかったわね、リン」


「……うん」


「それじゃあ、今度のクィディッチは、リンも見に行けるのね!」


 コップにアップルジュースを注いで、ハンナが大はしゃぎで言った。


 二週間と少し後に、ハッフルパフ最後のリーグ戦が行われることになっている。対戦相手はスリザリンだ。


 ちなみに、ハッフルパフはここまで二戦二敗なので、次の試合で負けた場合、クィディッチのトーナメントにおいて、問答無用で最下位になってしまう。それだけは避けたいということで、現在、ハッフルパフは応援ムード一色だ。


 他の寮の生徒たちも、表立ってはいないが、ハッフルパフの方を応援してくれているようだった。何しろ、今回の試合の勝敗とその点差が、寮対抗におけるスリザリンの状況に影響を与えるからだ。


 みんな今年こそはスリザリンに寮杯を渡したくなかった。皮肉なことに、この間のクィディッチの対戦での勝利でグリフィンドールが首位に立ったので、その想いがますます強くなっている。


 みんな期待と緊張、それから不安で一杯の視線をクィディッチ・チームのメンバーに送るので、メンバーたちは少し神経過敏になっているようだった。その中でも一番、焦燥に駆られているのは、シーカーのセドリック・ディゴリーではないかと、リンは思っていた。


 試合が近づくにつれて、選手たちに対する期待と応援はますます大きくなっていったし、勝敗を左右する重要なポジションであるシーカーの彼は、選手からまで頼みの綱にされていた。


 爽やかに微笑んで応える彼だが、最近は笑顔が僅かに硬くなっているのに、リンは気づいていた。


→ (2)


[*back] | [go#]