新生クィディッチ・チーム (1)



 新学期が始まって初めての週末、リンが朝早くに起床すると、珍しくスイがパッチリと起きていたので驚いた。まじまじとスイを見つめたリンは、彼女がなにやら興奮していることに気づく。



「……今日、何かあるの?」



 リンが着替えながら聞くと、スイは信じられないとばかりにリンを見つめてきた。



「何って、今日はクィディッチの選抜だろ?」


「……ああ」



 確かにそうだとリンは思った。二、三日前に、リンは、選抜が土曜日の朝八時から始まると知らされていた。



「でも、まだ六時だよ。こんな時間に起きてたら、君、選抜中に寝ちゃうんじゃない?」



 時計に目をやったリンが言った。スイは自称「低血圧」で、いつもリンが起こすまで寝ているし、寝起きも悪い。そんな彼女が一人で朝早くに起床するとは……今日の選抜は。途中で雷雨になるかもしれない。


 リンがちょっと不安になっているのには気づかず、スイは眉を吊り上げた。



「なに言ってんのさ。リンの晴れ舞台だよ? ボクが見逃すわけない。バッチリ目開けて見てるに決まってるだろ」


「晴れ舞台じゃない、ただの選抜だよ」



 性急すぎることをスイに指摘し、リンはパジャマを軽く畳み出す。スイは言い返そうとしたが、スーザンが目を覚ましたので、大人しく口を閉じるほかなくなった。



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 いつものメンバーで朝食を取ったあと、リンは箒を取りに寮に戻り、そのあとクィディッチ競技場へと向かった。スイが乗っていない方の肩に、箒をもたせ掛けるようにして歩きながら、リンは、隣や後ろを歩く友人たちを振り返る。



「君たちは誰も立候補しなかったの?」


「私、クィディッチは見る方が好きなの」


「応援に集中したいから」



 ハンナが答えた。スーザンも頷く。ベティは眠そうに欠伸した。



「アタシはビーターがやりたかったのよ。けど、ほら、募集してなかったっしょ?」



 残念そうに肩を竦めて、ベティはもう一度欠伸をする。ジャスティンが咎めるような目でベティを見たが、彼がなにか言う前に、アーニーが話し出した。



「僕、飛ぶこと自体は好きなんだけど、箒に乗って、かつボールを奪い合ったり棍棒を振り回したり、選手やボールを避けて小さなものを探したりするのは、その、少し不向きかなと思って」



 ふうと溜め息をついたアーニーを慰めるためか、ジャスティンが彼の肩を軽く叩いた。それを見て、ベティがニヤッと口角を上げる。



「ジャスティンは箒に乗るのが怖いのよね? 初乗りで振り落とされたし」


「そこは否定しないけど、僕が志願しなかった理由はそれじゃない」



 からかわれて怒るかと思いきや、ジャスティンは、ベティの言葉に頷いた。珍しいと思う反面で、リンは嫌な予感を覚える。視線を向けた先で、ジャスティンは笑みを浮かべた。



「ずっとリンだけを見つめていられるのは、選手じゃなくて観客の方だろう?」



 恍惚としているジャスティン以外の四人全員が、哀れむような目でリンを見た。なんとも言えない表情をするリンの頬を、スイがそっと一撫でした。



→ (2)


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