友人の見舞い(1) グリフィンドールの、あのネビル・ロングボトムが、飛行訓練で箒から落ちて怪我をしたらしい。 そんな話を聞いて、リンはちょっと心配した。魔法族の子たちは防衛本能が強いので、そんな命にかかわるような大怪我はしていないと思うが、ネビルのことだ、一概には言えない。 「 ――― ってことなんだけど、どう思う?」 リンに尋ねられ、彼女が大広間から持ってきた夕食を頬張っていたスイは、きょとんとした。とりあえず口の中に入っているものを飲み込んでから、口を開く。 「どうしてボクに聞くのさ」 「だって貴方、この世界での出来事は知ってるんでしょう?」 首を傾げてそう言うリンに、スイは呆れた表情を浮かべた。 「あのね、出来事っていっても、物語に書かれたことしか分からないよ。作者じゃないんだから、知ってるわけないでしょう?」 「……じゃあ、ネビルの怪我は、物語に書かれてないような小さなものってこと?」 それなら大したことではないだろうから安心できると思ったリンだったが、「いんや、書かれてたけど」とスイが続けたので、顔色を変えた。 「本に書かれるほど大きな怪我なの?」 「あー、いや、大丈夫! ただ手首の骨を折っただけだから!」 元々白い肌を余計に白くしたリンを見て、スイは慌てて付け加えた。立ち上がりかけたリンは、それを聞いて、ほっと肩の力を抜く。 「……なんだ、驚かさないでよ」 「ごめん……って、どこ行くのさ」 てっきり腰を下ろすのかと思いきや、リンは部屋の出入り口へと向かっている。 「……やっぱり気になるから、医務室に行ってくる」 ドアが閉まるのを見て、スイはリンゴに齧りついた。なんだかんだ仲良くやってるものだ、と思いながら。 → (2) |