魔法薬の先生(4)



 四人で地下牢を出て、階段を上がっていく。アーニーと並んで先を進んでいたジャスティンが、ちらりとリンの方を振り返ってきた。


「リン、君って、とても優秀なんですね。あんな難しい問題をいとも簡単に答えてしまうなんて……本当にすごい。僕なんて……恥ずかしい限りですが、一つも分かりませんでしたよ」


「……魔法薬学だけだよ。母さんがとても詳しいから」


「そんな、謙遜を。他の授業でも、いつも先生から褒められているでしょう?」


「それはまだ一年生で授業が比較的簡単だから……。もうしばらくしたら、そうもいかなくなるもの」


「そんな、まさか」


 自分はそんな大した人間じゃないと暗に言っているのに、ジャスティンは聞いていないようだった。リンが、才能あふれる、爪を隠した能ある鷹だとでも思っているみたいだ。


 ジャスティンが、とても熱のこもった目で見てくるので、困ってしまったリンは、ハンナに助けを求めようとした。が、ハンナはアーニーと和気藹々と ――― しかも、リンについて ――― 話しているところだった。


「……本当すごいのよ、リンったら。知ってると思うけど、この間の変身術でも、たった二回で、マッチ棒を針に変えてしまったの!」


「ハンナ、もうすぐ大広間に着くよ」


 ジャスティンまでハンナの話に耳を傾け始めたので、リンは慌てて話を逸らす。パンのいい匂いがすると言うと、ハンナだけでなくアーニーも反応を示した。


「おいしそうな匂いだ……。僕、お腹がペコペコだ」



 大広間に入ると、そこにいた生徒たちが、リンを見て、何やらひそひそと話し出した。魔法薬学、スネイプ、などという単語が聞こえてくる。どうやら、さっきの授業のことがもう広まっているらしい。


 空いている席を探して四人が通路を歩いていくと、何人かの生徒が、リンに明るく挨拶してきた。ハッフルパフだけでなく、グリフィンドールやレイブンクローの生徒もいたので、リンは少し居心地が悪く感じた。


 教員テーブルに近い方の席が空いているのを見つけて、リンたちはそこに座って昼食を取り始めた。四人とも空腹だったので、しばらくは無言で食べることに集中した。


 リンは、油っぽいものが苦手で、それらを避けて、結局サンドイッチやパンばかり食べていた。


「リン、体調でも悪いのですか? あまり食べていませんけど」


 またもや話し込んでいるハンナやアーニーには聞こえない程度の音量で、ジャスティンがリンに声をかけてきた。微かに眉をひそめて、気遣わしげな様子だった。


「ううん、そうじゃない。ただ、その、油っぽいものがダメで……」


「ああ、でしたら、ミートパイとか、アップルパイなら大丈夫だと ――― はい、どうぞ」


「え、あ……ありがとう」


「いいえ、これくらい何でもありません」


 リンにお礼を言われ、ジャスティンは、心底嬉しそうに笑った。曖昧に微笑み返して、リンはパイにナイフを入れた。


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