お茶の葉 (1)



「 ――― 『占い学』で優秀だってことが、お茶の葉の塊に死の予兆を読むふりをすることなんだったら、私、この学科といつまでお付き合いできるか自信がないわ! あの授業は『数占い』のクラスに比べたら、まったくのクズよ!」



 朝から嫌に疲れた新学期初日の、昼休みの出来事だった。

 昼食を取るために大広間に来たリンは、グリフィンドールのテーブルから聞こえてきた声に目を丸くした。何事なのか突き止める間もなく、ハーマイオニー・グレンジャーが、ツンツンしながら早足で歩いてきて、リンたちの横を通りすぎ、大広間を出ていった。



「……何事かしら?」


「……さあ」



 呆然とするハンナに返し、リンは、定位置であるテーブルの一番前へと歩き出した。そのあとを、ハンナたちがわらわらとついてくる。



「彼女、『占い学』って言ってたわね」


「それなら午後にあるよ。リンとベティは、そこで理由が分かるかもしれない」



 スーザンとアーニーが言った。リンは振り返って、自分の後ろに続いてくるメンバーを見渡したあと、首を傾げた。



「午後の授業まで待つ必要はないみたいだけど」


「なぜですか?」


「ねえ聞いて! 今日の『占い学』で、ハリー・ポッターが先生から死を予告されたんですって!」



 素直に疑問を口にしたジャスティンを押しのけて、姿を消していたベティが現れた。「いまグリフィンドールの女子生徒に聞いてきたの!」と興奮した様子で語り出すベティを唖然と見つめる友人たちに、リンは「ほらね」と肩を竦めた。



「今日の『占い学』で、お茶の葉を読んだらしいんだけど、」


「ベティ、ニュースを持ってきてくれたのは嬉しいよ。けど、とりあえず昼ご飯を食べようか? 話はそこで聞くよ」



 息せき切るベティを、リンが遮った。ベティは一瞬なにか言いたそうだったが、タイミングよく自分の胃袋が空腹を訴えた音を聞いたあと、黙って従った。



「それで、ハリーが死ぬって、どういうことなんだ?」



 オレンジジュースをグラス一杯飲み干したアーニーが、怖いもの聞きたさといった感じで聞いた。ハンナも恐々と、スーザンは心配そうに、ベティを見つめる。いつもはベティの言うことに特に関心を示さないジャスティンも、今回は内容が内容なので、興味を持ったようだ。



「あのね……」



 嬉々として語り始めるベティを一瞥して、リンはクロワッサンへと手を伸ばした。



→ (2)


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