意外な反応 (5)



「我が身も顧みず他人を救い、かつ気遣った貴女は、勇敢で高潔な人だと、僕は思う」


「夢見すぎでしょ!」



 誰かが、リンとスイの気持ちをまさに代弁してくれた。だいたい予想はつくが誰だろうかとスイが視線を向けると、ベティが「バッカじゃないの」と蔑んだ目でノットを見ていた。



「いちいち都合良く解釈しすぎでしょ?! アンタたち ――― ええ、そうよ、アンタも含んでるわよ、ジャス、リンを女神だとでも思ってんの? んなわけないでしょ!!」


「ああ、ベティ……君、今学期で一番いいことを言ってるよ」



 よくぞ言ってくれたと激励するリンに気を良くして、ベティはノットを鼻で笑った。



「まったく、バカな勘違いにも程があるわ! いい? リンはアンタとマルフォイを助けにいったわけじゃないのよ! 誰かが助けを求めてるのに気づいて様子を見にいったら、それが偶然アンタたちだったってだけなんだから! アンタじゃなくても助けたのよ! 自惚れないでちょうだい!」


「ベティ、それノットの思考を擁護してるわよ」



 黙って聞いていたスーザンが冷静に言った。「へ?」と間抜け面をするベティに、リンは溜め息をつく。スイは尻尾をパシンと振った。



「……もういい。ベティ、少し黙ってて」



 深々と溜め息をついて、リンが言った。スイはチラリとノットを見た。彼は熱っぽい目で食い入るように、自分へ顔を向けたリンを見つめていた。



「……あの、ノット。私、君の命を救った覚えはないから、そんな仰々しく堅苦しい態度を取らなくていいよ。普通にしてほしいな。普通に」


「……じゃあ、とりあえず今日はこの辺で帰る」



 聞き捨てならないセリフを残して、ノットは立ち去った。「今日は」って、「この辺で」って、なに。明日からどの辺まで続ける予定なの。リンがいろいろツッコミを入れた頃には、ノットはすでに、元いたスリザリンのテーブルに座っていた。その移動のスマートなこと。「姿くらまし」でもしたのかと ―――あり得ないことだと十分承知していたが、スイは思った。



「……わけ分かんない……」



 困惑した様子で、かつウンザリした様子で、リンが呟いた。スイは声を出せなかったが、その代わりに、慰めるようにリンの背中をポスンと軽く叩き、ついでに彼女の頬を撫でてやった。



「……人に好かれやすい体質って、苦労が多いのね」



 未だに続いている沈黙の中、しみじみとスーザンが呟いた。うんうんと頷く素振りまで見せるベティに苛立ちを覚え、リンは腹いせに彼女の足を蹴飛ばした。





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 スリザリン生からファンが生まれました。いや、妄想したら楽しそうだったので、つい。やりすぎかと反省。しかし後悔はしていない ←

 スリザリン生って、窮地を救われるようなシチュエーションに弱いと思います。命の恩人だ! 一生ついてく! みたいなノリ。
 


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