飛行訓練 .4 それぞれの箒は、十「箒」十色の反応を見せた。ピクリとも動かないもの、地面を転がるだけのもの、少し浮いただけですぐに落ちたもの。飛び上がって乗り手の手に収まったものは少なかった。 ジャスティンの箒はすぐ飛び上がったが、成功したと舞い上がった彼の額をゴッ! と柄で叩いたあと、地面に転がった(ベティは大笑いだった)。 リンの箒はフライングもいいところで、彼女が「あ」と言ったか言わないかの内に素早く飛び上がってリンの手の中に収まっていた。 「………さ、さすがですね、リン……」 「いや、別に大したことない……じゃなくて。ジャスティン、大丈夫?」 いつも通り称賛を否定しようとしたリンだったが、額を赤くしたジャスティンを見て、思わずツッコミを入れた。 ぶつかったときの音といい、額の色といい、相当痛そうだ。少しだけ心配になるリンに、ジャスティンは真面目な顔をして言った。 「ご心配なさらず。痛いですが全然大丈夫です」 「それは大丈夫とは言わないぞ」 間髪入れずに、リン……ではなく、ジャスティンの隣にいたアーニーが突っ込んだ。彼の手には箒がしっかりと握られている。 リンは横を見た。ハンナもスーザンもベティも、無事に箒を手にしていた。 「箒もちゃんと理解してんのよ、アンタがイヤーな奴だって」 ベティが鼻で笑って言った。ジャスティンはベティを睨んだが結局何も言わず、再び手を翳〔かざ〕して「上がれ!」と叫んだ。 ヒューッ、バシッ! という音がした。次いで、ベティの爆笑が校庭に響く。 地面に転がったものを数秒見つめたあと、リンとアーニーは顔を見合わせて、マダム・フーチに声をかけた。 「………先生、ジャスティンが失神したので、医務室に連れていっていいですか?」 **** 珍しく(?)コメディっぽいタッチで書いてみました。 なんとなく、ジャスティンは文化系(頭脳派っていう意味で)なイメージです。いや、マグルの世界では、きっとスポーツができる方。テニスとかやってそう。だけど魔法界の実技には順応しにくそう。座学はいいんだよ、だけど箒はね……って感じ? ネビルとはまた違う、地面に足をつけていたいタイプに見えるんです。 → 行ってきます、さようなら、お元気で (クィレル視点の「暗転」後の話) |