汽車の中で(1)



 夏学期の残りの日々は、焼けるような太陽で朦朧としているうちに過ぎた。あまりにも速く時が過ぎ、もうホグワーツ特急に乗って家に帰るときがやってきた。


 リンがハンナたちと一つのコンパートメントを独占して話に花を咲かせていると、誰かがドアをノックした。焦げ茶色の髪の男子生徒と黒髪の男子生徒 ――― ハッフルパフ生のエドガー・ウォルターズとセドリック・ディゴリーだった。

 みんな驚いて、不思議そうな顔を見合わせた。ベティだけは、嬉しそうに歓声を上げたが。



「よう、リン」


「……こんにちは、ウォルターズ」


「エドでいいって言ってんのに」



 からりとした笑顔でリンに挨拶したエドガーは、無遠慮にコンパートメントの中に入ってきた。セドリックも、申し訳なさそうな顔をしながら、さりげなくそのあとに続く。

 いったい何の用だろうか……みんなが疑問に思っていると、エドガーがセドリックを小突き、二人一緒にリンを見た。



「あのさ、リン」


「少し頼み事をしてもいいかな」


「……内容によります」



 聞くだけならとりあえず聞きますが、と、首を傾げつつリンが返事をすれば、エドガーは爽やかに、セドリックは柔らかく微笑んで、リンを見つめる。彼女の膝の上に座るスイが身じろぎ、ハンナたちが息を潜めた。



「来年、クィディッチのシーカーをやってくれないかな?」



 セドリック・ディゴリーが笑顔で言ってのけた頼み事に、リンが瞬く。スイやハンナたちは、ポカンと口を開けた。



「……なぜ?」


「メンバーが何人か、今年卒業したから」



 リンが問うと、なにをそんな当たり前のことをとばかりにエドガーが言った。



「二、三人足りなくなるから、新しいメンバーを選考するんだけど、その候補として、君の名前が挙がったんだ」


「チェイサーを二人、シーカーを一人募集する予定なんだ。シーカー志願者にいい奴がいりゃセドがキーパーになるし、誰もいなけりゃセドがシーカー継続するっつーことで、新しくキーパーを募集するか、みたいな」



 セドリックがあとを続け、さらにそのあとをエドガーが引き継ぐ。息ピッタリだ……ウィーズリーの双子には負けるが、と、リンは思った。


 エドガーは不意に、アーニーが持っていた百味ビーンズの袋から一つ(無断で)取って口に放り込んだ。モグモグと口を動かして「バターだな」と呟いて、ビーンズを飲み込み、話を続ける。



「そこで、だ。リン、おまえをシーカー選抜応募者にカウントしてもいいか?」


「なんで私なんですか?」



 ジャスティンが百味ビーンズに手を伸ばすのを見ながら(そして意外と緊張感ないなと思いながら)リンは尋ねた。



「君は箒が得意だって聞いたから」



 セドリックが簡潔に答えた。え、そうなの? という目で見てくるスイを放置して、リンは首を傾げる。



→ (2)


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