生身も、幽体も、魂も(3) 「僕たち、みんなあの場にいて、何が起こったのか見ていた」 「それじゃあ、僕が話しかけたあと、ヘビが退いたのに気がついただろう?」 「僕が見たのは、君が蛇語を話したこと、そしてヘビをジャスティンの方に追い立てたことだ」 「追い立てたりしてない!」 震えているくせに頑固に言い張るアーニーに、ハリーの怒りが爆発した。 「ヘビはジャスティンを掠りもしなかった!」 「リンがあいつを庇ったからだ! リンは純血だ、だから君は、」 「血がどうとかいう問題じゃない!」 ハリーは激しい口調で言った。 「なんで僕がマグル生まれの者を襲う必要がある?」 「君が一緒に住んでるマグルを憎んでるって聞いた ――― 」 「アーニー!」 即座に答えたアーニーを、リンが、咎めるように睨んだ。アーニーが、ぎくりとして、怯む。 しかし、それでも、ハリーの感情の揺れは収まらなかった。 「ごめん、ポッター。アーニーは、」 「ダーズリーたちと一緒に暮らしてたら、憎まないでいられるもんか! できるなら、君がやってみればいい!」 リンが謝罪するのを遮って言い放ち、ハリーは、怒り狂って荒々しく図書館を出て行った。マダム・ピンスが睨んできたのも気にならなかった。 いったいどうして、みんな僕を悪者にしたがるんだろう? 血筋なんて、そんなもの、少し前まで魔法の世界のことを知らなかった僕が気にするはずないのに! 少し冷静に考えれば分かるようなことじゃないか。なんで理解しようとしないんだ? 腹を立てて歩いていると、何かにぶつかった ――― ハグリッドだ。片手に鶏の死骸をぶら下げている。 「ハリー! なんでこんなところにおる?」 「授業が休講になって ――― ハグリッドこそ何してるの?」 ハグリッドは、ダランとした鶏を持ち上げて見せた。 「また殺られてな。今学期になって二羽目だ。ダンブルドア先生から、鶏小屋の周りに魔法をかけるお許しをもらわにゃ」 ハリーは、話もそこそこに、ハグリッドと別れた。たわいもない話を、無邪気に続けられるような気分ではなかったからだ。 → (4) |