生身も、幽体も、魂も(2)



「だいたい、どうして彼が継承者だと思うの?」


「あら、リンは違うって思ってるわけ?」



 今度は、ミルクティーブラウン色の、くせ毛の女の子が尋ねた。リンは「うん」と頷いて、ページをめくる。

 ハリーは、胸の奥が暖かくなるのを感じた……ロンやハーマイオニー以外にも僕を信じてくれる人がいる……飛び上がりたいくらい嬉しかった。



「なんでそう思うんだ?」



 ハリーとは対照的に、アーニーは、自説を否定されて不機嫌そうだった。リンは、相変わらず冷静に本を読んでいる。またページをめくってから、やっと口を開いた。



「……まず、ミセス・ノリスが襲われた日だけど、現場にいるのを目撃されたなんて変だもの。もっと早く ――― みんながハロウィーン・パーティーを楽しんでる間に事を運んで、誰にも見つからないように去った方がずっと都合がいい……もし犯人だったらってことだけど。ハーマイオニー・グレンジャーも一緒だったなら、なおさらそうするはずだよ。彼女はとても賢いから、そんな疑われるような真似は絶対しない」



 リンは一旦息をつき、またもやページを捲った。喋りながらどうやって本を読めるのか、ハリーはとても不思議だった。



「昨日もそう。仮にジャスティンを狙ってるなら、周りに誰もいない場所でやった方が有利じゃない? わざわざ公衆の面前で襲う必要がある?」



 沈黙の中、みんな顔を見合わせた。ハンナが真っ先にリンに同意した。



「私も違うと思う。だって、アーニー、彼って『例のあの人』を消したのよ。そんなに悪人なはずないわ」



 アーニーは深々と溜め息をついて、さっきよりも声を落とした。ハリーは彼の言葉が聞き取れるよう、さらに近づいた。



「ポッターが『例のあの人』に襲われたとき、まだほんの赤ん坊だったのに、どうやって生き残ったのか誰も知らない……あれだけの呪いを受けて生き残れるのなんて、本当に強力な『闇の魔法使い』だけだ……つまり、『例のあの人』がポッターを殺したかったのは、闇の帝王がもう一人いて、競走になるのが嫌だったからなんだ」



 リンが口を開くより先に、ハリーの我慢の限界がきた。大きく咳払いし、本棚の影から姿を現した。


 突然現れた噂の人物に、ハッフルパフ生は ――― リンを除いて、一斉に石になったように見えた。特にアーニーは、顔から血の気が引いていた。



「やあ」


「……こんにちは」



 ハリーは、努めて朗らかに声をかけた。リンだけが挨拶を返した。他のメンバーは、まだ硬直している。



「僕、ジャスティン・フィンチ‐フレッチリーを探してるんだけど……」


「……彼は君に会いたがってないよ。一応聞くけど、用件は?」



 みんな顔色を変える中、一人だけ落ち着いているリンが尋ねた。



「昨日のことなんだ。本当は何が起こったのか、彼に説明したいんだよ」



 リンは少し考えているようだったが、彼女が決断する前に、蒼白な顔をしたアーニーが口を挟んできた。



→ (3)


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