お互いの気持ち


 
 俺と土方の体だけの関係なんて、セフレ…なんだと土方は思ってんのかな。

 なんて思うようになったのは土方と体の関係を持つようになってから随分とたった頃。最初は快楽だけを求めるためだけに土方と体を重ねてきた。
 気持ち良ければそれでいい。気持ちなんていらない。最初の頃はそう思ってた。





【お互いの気持ち】





 でも最近は違う。


 土方と体を重ねる度に自分の中に嫌なものが残る。
 黒くてモヤモヤした蟠り。
 その意味することに気付くまで時間はかからなかった。

 土方に対しての想い。それは日を増すごとにだんだんと大きくなっていった。この気持ちは誰にも知られることなく俺自身の中に留めておく方がいい。それが土方にとっても俺にとっても良いことなんだ。


 そして今日も土方への想いを胸に秘め、土方に抱かれる。





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「っあ!んっ……っ!ふっ…っ」


 真上からガンガンと突かれる度に俺の体は跳ね、声もまともに出せなくなる。お互いの出したモノや汗などでべたべたになりながらもまだ快楽を求め合う。


「淫乱が…喘ぎながら腰振りやがって、まだ足りねぇのかよ」

「違…ぇ!ふっんンッ…もっ抜け…よ!」

「あぁ…抜いてやるよ。俺が一回イってからな」


 ズンッと最奥まで突くように激しく腰を揺すられる。肌と肌とがぶつかり合う音と、俺の掠れた喘ぎだけが耳に入る。時々聞こえる息を詰めるのに俺の自身は反応し、熱を持ち始める。





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 情事が終わると土方は屯所に戻るためさっさと支度する。仕事が忙しいからすぐに出ていくとか俺とは違うんだとか…。
 少しは情事の後の余韻に二人で浸りたいとか…思うんだけどよぉ…。
 恋人でも何でもない関係だからんなこと叶えられる筈がない。





 なぁ…





 俺は自分の気持ちに気付いて、





 快楽のためだけに体求めてるんじゃねぇんだぜ?



 お前の気持ちが欲しいとか、



 一時だけ愛し合うんじゃなく




 その後もずっと愛していて欲しいとか思ってんのによぉ…





 お前は俺がこんなこと思ってんだってこと、思いもしないんだろ?






 そうして俺は、先に部屋を出ていく一人の男の背中を目だけで追いかける。


「行ってら〜」


 …………え…?


 自分でもびっくりした。無意識に言葉が出ていた。いつもは見送りなんてしないのに。いや、したくても出来ない。ただ体だけの関係なんだからそんなこと言えない。


「あー…いきなり、ごめん」


 気まずそうに目を背けながら言う。すると目の前がいきなり陰ったと思ったら土方の顔がアップで現れた。


「んなこと言うんじゃねぇよ」

「…ごめん」


 ズキン、と胸が痛んだ感じがした。やっぱり土方にとって俺の気持ちは迷惑なもんなんだ。


「テメェと離れられなくなんだろーが」

「…は…?」


 土方の言葉に耳を疑う。今…何つった?出て行こうとする土方を見ると、後ろからでもはっきりと見える位に耳が真っ赤になっていた。つられて俺も赤くなる。


「行ってくる…」


 照れを隠すように、ぶっきらぼうに言った土方に笑ってしまう。





 今度会う時は何かが変わっているかもしれねぇ。



 それは根拠なんてねーことだけど、さっきの赤くなった土方をみて叶わぬ恋なんて思いたくねぇ。







 で、今度会う時はお帰りっつって迎えてやろうかな…。






―end―





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あとがき
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シリアスですね…。独りで悩んで悩みまくってる話しが大好きです。結果的には両想いになるんですけどね…。感想頂けると嬉しいですvV


08/11/15

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